忍者ブログ
還空論 HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。 ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 「どうぞお座りになって下さい」
 月辰がレシルのために椅子を引く。
 レシルは正直困惑した。2人は一体何を考えているのだろう。
 いわば自分は侵入者だ。城から排除するべき者だ。
 それをいとも簡単に招き入れ、そして茶会に招待する。
 “魔族”と名乗ったのに恐れる様子は何もない。
 落ち着いた物腰でやわらかい微笑みをたたえ、思慮深ささえ感じる。
 断るのも何だろうと、レシルは黙って椅子に座った。
 「レシル様。城などを探索して、何か面白いものを見つけられましたか?」
 翡月もレシルの正面に腰掛け、話を切り出す。
 レシルは頷いた。
 「たった今、見つけました」
 「たった今…?」
 「銀髪に紫の瞳――貴女たちのことです」
 「? この髪の色と瞳の色は、魔族には珍しいのですか?」
 「そんなことはありません。しかしどうやらそれが、この国の王族の証のようなので」
 翡月は黙った。
 代わりに、翡月の傍に立つ月辰が言う。
 「貴方は王族を捜しにこの城に来たんですね」
 「ええ、そうです」
 「何のために?」
 そこに英里が帰ってきた。彼女が押してきた台の上には3人分のお茶と茶菓子が載せてある。
 それを並べる英里の手は震えていた。やはり魔族は恐い。
 実際本当に魔族かどうかは分からない。確かめる方法なんて知らないし、今まで会ったことがない。
 だけど“魔族は恐ろしい”――それだけは、子どもの頃から知っていた。
 「英里」
 震える彼女に翡月が声をかけた。
 「頼みがあるの。今日伺う予定だった教会には行けそうにないから、その旨を伝えて来て欲しいんです」
 「あ…はい、分かりました」
 英里はお辞儀をしてぱたぱたと出て行った。
 月辰は苦笑する。
 「姉上。今日はそんなご予定なかったでしょう。明日のはずでは? 後で英里に怒られますよ、無駄骨を折らされたと」
 「それでもあの子には、この場にいるよりはましでしょう」
 レシルも苦笑した。

 ――居心地が悪い。

 どうしてこの城に来たのだろう。
 人間も“同類”だと思いたくて来たはずなのに。

 さっき見た戦争。
 それを動かす国の王族なら。――そう思って来たはずなのに。

 どうして今目の前にいるのが、この2人なのだろう。

拍手

PR
 魔族。
 魔界に住み、魔力を持ち、破壊と殺戮を好む“化け物”。
 それが人間たちの、魔族に対する認識。

 悲鳴を上げたのは侍女だった。
 月辰が咄嗟に彼女を抱きしめて安心させてあげる。
 しかし既に響いてしまった悲鳴に、衛兵たちが駆けつけてきた。
 戦時中の今、常よりも城内の警備が強化されているのは言うまでもない。
 「何事ですか!」
 やって来た兵たちに翡月は言う。
 「何でもありません。お騒がせしました」
 「翡月様、しかし……! その男は?」
 兵たちがレシルに注目する。翡月は微笑んだ。
 「私と月辰のお客人です。何事もありません。駆けつけてくれてありがとう。どうぞ持ち場に戻って下さい」
 兵たちは何も言えなくなり、黙って言う通りにした。
 レシルは首を傾げる。
 「何故?」
 翡月はレシルの手を取った。
 「きちんと礼を取り挨拶をした貴方に、無礼なことをするわけにはいきません」
 冷静な態度にレシルは感心する。
 「貴女はこの国の王族ですか」
 「はい、そうです」
 「しかしその態度はどうでしょう。私は追い出した方がいいかもしれませんよ」
 「いいえ、貴方を追い出そうとしても簡単にはいかないでしょう。ただでさえ警備が強化されているこの城に、容易く侵入して探索していた貴方ですから。――兵たちに、無駄に傷ついて欲しくなかったんです」
 そう言ってちらっと月辰を見た。
 月辰になだめられていた侍女も落ち着いたようではあるが、怯えた目をレシルに向けている。
 “魔族”――その言葉が、人間たちにはこんなにも重い。
 「英里(えいり)、お客様にお茶をご用意して差し上げて」
 英里と呼ばれた侍女は首を振った。
 「いけません、魔族などと…!! しかも姫様はお休みにならなければ――」
 英里は言葉を切った。
 自分が使えている主の、優しい笑顔。
 それを見ると何も言えなくなる。意味もなくほっとする。たとえ近くに恐ろしい魔族がいるとしても、大丈夫だと思ってしまう。
 「お茶を…用意します。お茶会が終わったら、お休みになって下さいますね?」
 「勿論…ありがとう、いつも心配ばかりかけてごめんなさい」
 英里は名残惜しそうに翡月を見ると、礼をして一旦部屋から出て行った。

拍手

>だーつん様

拍手

TEMPLATE こばりAD 忍者ブログ [PR]
カレンダー
07 2026/08 09
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
最新コメント
[04/23 鴻上]
[04/23 神風零]
[04/10 鴻上]
[04/09 神風零]
[12/20 鴻上]
ブログ内検索