還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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「どうぞお座りになって下さい」
月辰がレシルのために椅子を引く。
レシルは正直困惑した。2人は一体何を考えているのだろう。
いわば自分は侵入者だ。城から排除するべき者だ。
それをいとも簡単に招き入れ、そして茶会に招待する。
“魔族”と名乗ったのに恐れる様子は何もない。
落ち着いた物腰でやわらかい微笑みをたたえ、思慮深ささえ感じる。
断るのも何だろうと、レシルは黙って椅子に座った。
「レシル様。城などを探索して、何か面白いものを見つけられましたか?」
翡月もレシルの正面に腰掛け、話を切り出す。
レシルは頷いた。
「たった今、見つけました」
「たった今…?」
「銀髪に紫の瞳――貴女たちのことです」
「? この髪の色と瞳の色は、魔族には珍しいのですか?」
「そんなことはありません。しかしどうやらそれが、この国の王族の証のようなので」
翡月は黙った。
代わりに、翡月の傍に立つ月辰が言う。
「貴方は王族を捜しにこの城に来たんですね」
「ええ、そうです」
「何のために?」
そこに英里が帰ってきた。彼女が押してきた台の上には3人分のお茶と茶菓子が載せてある。
それを並べる英里の手は震えていた。やはり魔族は恐い。
実際本当に魔族かどうかは分からない。確かめる方法なんて知らないし、今まで会ったことがない。
だけど“魔族は恐ろしい”――それだけは、子どもの頃から知っていた。
「英里」
震える彼女に翡月が声をかけた。
「頼みがあるの。今日伺う予定だった教会には行けそうにないから、その旨を伝えて来て欲しいんです」
「あ…はい、分かりました」
英里はお辞儀をしてぱたぱたと出て行った。
月辰は苦笑する。
「姉上。今日はそんなご予定なかったでしょう。明日のはずでは? 後で英里に怒られますよ、無駄骨を折らされたと」
「それでもあの子には、この場にいるよりはましでしょう」
レシルも苦笑した。
――居心地が悪い。
どうしてこの城に来たのだろう。
人間も“同類”だと思いたくて来たはずなのに。
さっき見た戦争。
それを動かす国の王族なら。――そう思って来たはずなのに。
どうして今目の前にいるのが、この2人なのだろう。
月辰がレシルのために椅子を引く。
レシルは正直困惑した。2人は一体何を考えているのだろう。
いわば自分は侵入者だ。城から排除するべき者だ。
それをいとも簡単に招き入れ、そして茶会に招待する。
“魔族”と名乗ったのに恐れる様子は何もない。
落ち着いた物腰でやわらかい微笑みをたたえ、思慮深ささえ感じる。
断るのも何だろうと、レシルは黙って椅子に座った。
「レシル様。城などを探索して、何か面白いものを見つけられましたか?」
翡月もレシルの正面に腰掛け、話を切り出す。
レシルは頷いた。
「たった今、見つけました」
「たった今…?」
「銀髪に紫の瞳――貴女たちのことです」
「? この髪の色と瞳の色は、魔族には珍しいのですか?」
「そんなことはありません。しかしどうやらそれが、この国の王族の証のようなので」
翡月は黙った。
代わりに、翡月の傍に立つ月辰が言う。
「貴方は王族を捜しにこの城に来たんですね」
「ええ、そうです」
「何のために?」
そこに英里が帰ってきた。彼女が押してきた台の上には3人分のお茶と茶菓子が載せてある。
それを並べる英里の手は震えていた。やはり魔族は恐い。
実際本当に魔族かどうかは分からない。確かめる方法なんて知らないし、今まで会ったことがない。
だけど“魔族は恐ろしい”――それだけは、子どもの頃から知っていた。
「英里」
震える彼女に翡月が声をかけた。
「頼みがあるの。今日伺う予定だった教会には行けそうにないから、その旨を伝えて来て欲しいんです」
「あ…はい、分かりました」
英里はお辞儀をしてぱたぱたと出て行った。
月辰は苦笑する。
「姉上。今日はそんなご予定なかったでしょう。明日のはずでは? 後で英里に怒られますよ、無駄骨を折らされたと」
「それでもあの子には、この場にいるよりはましでしょう」
レシルも苦笑した。
――居心地が悪い。
どうしてこの城に来たのだろう。
人間も“同類”だと思いたくて来たはずなのに。
さっき見た戦争。
それを動かす国の王族なら。――そう思って来たはずなのに。
どうして今目の前にいるのが、この2人なのだろう。
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魔族。
魔界に住み、魔力を持ち、破壊と殺戮を好む“化け物”。
それが人間たちの、魔族に対する認識。
悲鳴を上げたのは侍女だった。
月辰が咄嗟に彼女を抱きしめて安心させてあげる。
しかし既に響いてしまった悲鳴に、衛兵たちが駆けつけてきた。
戦時中の今、常よりも城内の警備が強化されているのは言うまでもない。
「何事ですか!」
やって来た兵たちに翡月は言う。
「何でもありません。お騒がせしました」
「翡月様、しかし……! その男は?」
兵たちがレシルに注目する。翡月は微笑んだ。
「私と月辰のお客人です。何事もありません。駆けつけてくれてありがとう。どうぞ持ち場に戻って下さい」
兵たちは何も言えなくなり、黙って言う通りにした。
レシルは首を傾げる。
「何故?」
翡月はレシルの手を取った。
「きちんと礼を取り挨拶をした貴方に、無礼なことをするわけにはいきません」
冷静な態度にレシルは感心する。
「貴女はこの国の王族ですか」
「はい、そうです」
「しかしその態度はどうでしょう。私は追い出した方がいいかもしれませんよ」
「いいえ、貴方を追い出そうとしても簡単にはいかないでしょう。ただでさえ警備が強化されているこの城に、容易く侵入して探索していた貴方ですから。――兵たちに、無駄に傷ついて欲しくなかったんです」
そう言ってちらっと月辰を見た。
月辰になだめられていた侍女も落ち着いたようではあるが、怯えた目をレシルに向けている。
“魔族”――その言葉が、人間たちにはこんなにも重い。
「英里(えいり)、お客様にお茶をご用意して差し上げて」
英里と呼ばれた侍女は首を振った。
「いけません、魔族などと…!! しかも姫様はお休みにならなければ――」
英里は言葉を切った。
自分が使えている主の、優しい笑顔。
それを見ると何も言えなくなる。意味もなくほっとする。たとえ近くに恐ろしい魔族がいるとしても、大丈夫だと思ってしまう。
「お茶を…用意します。お茶会が終わったら、お休みになって下さいますね?」
「勿論…ありがとう、いつも心配ばかりかけてごめんなさい」
英里は名残惜しそうに翡月を見ると、礼をして一旦部屋から出て行った。
魔界に住み、魔力を持ち、破壊と殺戮を好む“化け物”。
それが人間たちの、魔族に対する認識。
悲鳴を上げたのは侍女だった。
月辰が咄嗟に彼女を抱きしめて安心させてあげる。
しかし既に響いてしまった悲鳴に、衛兵たちが駆けつけてきた。
戦時中の今、常よりも城内の警備が強化されているのは言うまでもない。
「何事ですか!」
やって来た兵たちに翡月は言う。
「何でもありません。お騒がせしました」
「翡月様、しかし……! その男は?」
兵たちがレシルに注目する。翡月は微笑んだ。
「私と月辰のお客人です。何事もありません。駆けつけてくれてありがとう。どうぞ持ち場に戻って下さい」
兵たちは何も言えなくなり、黙って言う通りにした。
レシルは首を傾げる。
「何故?」
翡月はレシルの手を取った。
「きちんと礼を取り挨拶をした貴方に、無礼なことをするわけにはいきません」
冷静な態度にレシルは感心する。
「貴女はこの国の王族ですか」
「はい、そうです」
「しかしその態度はどうでしょう。私は追い出した方がいいかもしれませんよ」
「いいえ、貴方を追い出そうとしても簡単にはいかないでしょう。ただでさえ警備が強化されているこの城に、容易く侵入して探索していた貴方ですから。――兵たちに、無駄に傷ついて欲しくなかったんです」
そう言ってちらっと月辰を見た。
月辰になだめられていた侍女も落ち着いたようではあるが、怯えた目をレシルに向けている。
“魔族”――その言葉が、人間たちにはこんなにも重い。
「英里(えいり)、お客様にお茶をご用意して差し上げて」
英里と呼ばれた侍女は首を振った。
「いけません、魔族などと…!! しかも姫様はお休みにならなければ――」
英里は言葉を切った。
自分が使えている主の、優しい笑顔。
それを見ると何も言えなくなる。意味もなくほっとする。たとえ近くに恐ろしい魔族がいるとしても、大丈夫だと思ってしまう。
「お茶を…用意します。お茶会が終わったら、お休みになって下さいますね?」
「勿論…ありがとう、いつも心配ばかりかけてごめんなさい」
英里は名残惜しそうに翡月を見ると、礼をして一旦部屋から出て行った。
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