還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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レシルが王となったのは、たった10年前のことだ。
彼は“殺戮”の後に王となった。
ラウを除く全ての兄姉を、その手で殺したのだ。
理由は簡単。
王の正妻の子である自分――正統なる王太子を差し置いて、長兄が王位を奪ったからだった。簒奪の方法は勿論、当時の魔王の暗殺。
長兄は自分の父親を、自分の手で、殺した。他の兄姉たちと共に結託して。
末子であるにも関わらず次代の王となるレシルに対する反感か、父に最も可愛がられていたラウへの嫉妬か。
レシルにはそんなことはどうでも良かった。
だけど奪われたままで済ますつもりなどなかった。
結果“殺戮”を実行した。
さすが魔王だと、皆は言った。
虚しい響きだと、彼は思った。
「こんなことなら、大人しく婚約披露の儀に出るべきだったかな…」
ロン・コハクの王城上空でレシルは呟いた。
結婚が嫌だと言って出て来た自分。
相手に不満があったわけではないし、そもそも相手のこともよく知らない。
だけど嫌だった。
“結婚”が“魔王としての仕事”だったからだ。
王を殺した兄たちを殺した自分。
城を惨劇の舞台へと変えた自分を、人々は“魔王”と言って崇めてくる。
魔王は強さが全てだからだ。
でも自分は本当に王でいていいのか。
殺戮が本能。強い者が魔界の王。
分かっている。だからこそ自分も兄たちを殺した。
しかしそれで王としての責任が果たせるというのか。
民を恐怖せしめて一体何になる。
それが王だというのなら、魔界には何のために王が立つ。
「人間も同じだと、確かめられたなら踏ん切りがついたんだ」
なのに初めて会った人間の王族は――。
レシルは地上を見下ろした。
翡月が馬車で城を出発しようとしている。
戦争を止めるというのだ。その華奢な体で。
父が始めてしまった戦争の責任は自分にもあると、明らかに丈夫そうではない体で、戦争へ向かおうというのだ。
「私は……本当は」
そうあることを、求めていたんだ。
――自分自身の王という立場に。
彼は“殺戮”の後に王となった。
ラウを除く全ての兄姉を、その手で殺したのだ。
理由は簡単。
王の正妻の子である自分――正統なる王太子を差し置いて、長兄が王位を奪ったからだった。簒奪の方法は勿論、当時の魔王の暗殺。
長兄は自分の父親を、自分の手で、殺した。他の兄姉たちと共に結託して。
末子であるにも関わらず次代の王となるレシルに対する反感か、父に最も可愛がられていたラウへの嫉妬か。
レシルにはそんなことはどうでも良かった。
だけど奪われたままで済ますつもりなどなかった。
結果“殺戮”を実行した。
さすが魔王だと、皆は言った。
虚しい響きだと、彼は思った。
「こんなことなら、大人しく婚約披露の儀に出るべきだったかな…」
ロン・コハクの王城上空でレシルは呟いた。
結婚が嫌だと言って出て来た自分。
相手に不満があったわけではないし、そもそも相手のこともよく知らない。
だけど嫌だった。
“結婚”が“魔王としての仕事”だったからだ。
王を殺した兄たちを殺した自分。
城を惨劇の舞台へと変えた自分を、人々は“魔王”と言って崇めてくる。
魔王は強さが全てだからだ。
でも自分は本当に王でいていいのか。
殺戮が本能。強い者が魔界の王。
分かっている。だからこそ自分も兄たちを殺した。
しかしそれで王としての責任が果たせるというのか。
民を恐怖せしめて一体何になる。
それが王だというのなら、魔界には何のために王が立つ。
「人間も同じだと、確かめられたなら踏ん切りがついたんだ」
なのに初めて会った人間の王族は――。
レシルは地上を見下ろした。
翡月が馬車で城を出発しようとしている。
戦争を止めるというのだ。その華奢な体で。
父が始めてしまった戦争の責任は自分にもあると、明らかに丈夫そうではない体で、戦争へ向かおうというのだ。
「私は……本当は」
そうあることを、求めていたんだ。
――自分自身の王という立場に。
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「月辰。私は行きます…戦場へ」
「どうしても、ですか」
「はい」
「無茶をすることが、自分の命を縮めることだと分かっていても?」
翡月は月辰を見つめる。
「――はい、それでも。今…止めなければ…」
誰かが戦争を止めてくれる?
そんなことはない。
だから自分自身の手で止めなければならない。
皆が泣いている。
死にたくないと、死んで欲しくないと。
戦いたくないと、ただ平和に暮らしたいと。
その声を聞かずして、何が王族…!!
――――王とは強いものだ。
殺戮を好むものだ。
父の姿を思い出す。
民に慕われる、真っ直ぐな王だった。
自分にも優しかった。
皆父が好きだった。
だけどそんな父も、戦うときはまるで別人のように恐ろしく。
それが“王”なんだと思い知らされた。
『レシル。強くありなさい』
王は倒れてはいけない。
常に前を見なければならない。
民の前に立たねばならない。
民の光であらねばならない。
『強く、強く』
恐ろしいほどに、強く。
―――ああ。
“王”とは“王族”とは、何だろう。
「どうしても、ですか」
「はい」
「無茶をすることが、自分の命を縮めることだと分かっていても?」
翡月は月辰を見つめる。
「――はい、それでも。今…止めなければ…」
誰かが戦争を止めてくれる?
そんなことはない。
だから自分自身の手で止めなければならない。
皆が泣いている。
死にたくないと、死んで欲しくないと。
戦いたくないと、ただ平和に暮らしたいと。
その声を聞かずして、何が王族…!!
――――王とは強いものだ。
殺戮を好むものだ。
父の姿を思い出す。
民に慕われる、真っ直ぐな王だった。
自分にも優しかった。
皆父が好きだった。
だけどそんな父も、戦うときはまるで別人のように恐ろしく。
それが“王”なんだと思い知らされた。
『レシル。強くありなさい』
王は倒れてはいけない。
常に前を見なければならない。
民の前に立たねばならない。
民の光であらねばならない。
『強く、強く』
恐ろしいほどに、強く。
―――ああ。
“王”とは“王族”とは、何だろう。
期待外れか、期待通りか。
2人は改めて、と言い、レシルに名乗った。
姉の方を翡月、弟の方を月辰。
レシルは噛みしめるように、その名を心の中で繰り返す。
「さて話を戻しましょう」
月辰が言った。
「貴方は何故王族を捜していたんですか? レシル様」
「…………戦争を、見ました」
さっと翡月のただでさえ白い顔から血の気が引く。
レシルは続けた。
「とても虚しい戦いでした」
月辰も俯いた。
「……悲しいことです」
「あのような戦争をする国の王族を、この目で見てみたかったんです」
「滑稽ですか?」
翡月が真っ直ぐにレシルを見つめ、訊く。
「魔族の目から見て、私たちは滑稽ですか?」
「“滑稽”だと、言って欲しそうな目ですね」
「―――っ」
「ええ、滑稽ですよ。疲れ果て、朦朧としながら、それでも敵に剣を向け、命を奪う。それはあまりにも滑稽な姿でした」
「父の所為です」
翡月のか細い声。
「父の所為なんです。この国の王が、民を殺しているんです…!」
突然レシルは立ち上がった。
そして翡月と月辰に背を向ける。
「失礼します」
ふり返ることもなく、部屋を出て行った。
2人は改めて、と言い、レシルに名乗った。
姉の方を翡月、弟の方を月辰。
レシルは噛みしめるように、その名を心の中で繰り返す。
「さて話を戻しましょう」
月辰が言った。
「貴方は何故王族を捜していたんですか? レシル様」
「…………戦争を、見ました」
さっと翡月のただでさえ白い顔から血の気が引く。
レシルは続けた。
「とても虚しい戦いでした」
月辰も俯いた。
「……悲しいことです」
「あのような戦争をする国の王族を、この目で見てみたかったんです」
「滑稽ですか?」
翡月が真っ直ぐにレシルを見つめ、訊く。
「魔族の目から見て、私たちは滑稽ですか?」
「“滑稽”だと、言って欲しそうな目ですね」
「―――っ」
「ええ、滑稽ですよ。疲れ果て、朦朧としながら、それでも敵に剣を向け、命を奪う。それはあまりにも滑稽な姿でした」
「父の所為です」
翡月のか細い声。
「父の所為なんです。この国の王が、民を殺しているんです…!」
突然レシルは立ち上がった。
そして翡月と月辰に背を向ける。
「失礼します」
ふり返ることもなく、部屋を出て行った。
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