還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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ああ――その不安を、もっと突き詰めていれば。
「ねえ、レシル」
庭で娘が家臣の子どもたちと遊ぶのを眺めながら、翡月は問いかけた。
「なんだ?」
「ありがとう」
レシルは苦笑する。
「何が」
「出会ったときのこと、覚えてる?」
「勿論。忘れるわけがないだろう」
寧ろどうしてそんな話を突然するんだと、そう思ったけれどレシルは口にしなかった。
「ある日突然貴方がこの城に現れたの」
「そうだったな。突然魔族に会ったというのに、翡月も月辰も動じずに私と向かい合った」
「怖くなかったもの。そうね……少し、可哀想だった」
「私が?」
「何かを必死に探していたの。それを求めてやってきたのに、私たち2人を見て困惑していたでしょう?」
「すごいな。そんなことまで分かったのか」
「私たちは期待外れだったのかしら」
「――それは違う」
迷っていた。
自分の王としての在り方に。
かけていた。
人間の世界の王に。
人間も魔族と同じであれば、諦めきれると思った。
本当は諦めたくなどなかったのに。
「期待外れなんかじゃない。期待以上だったよ、翡月は」
諦めるどころか、諦めない意志を固めさせてくれた。
翡月はくすくすと笑った。
「私、幸せだわ」
「そうか?」
「ええ。……レシル、これから訊くこと、嘘は吐かないでね」
「何……?」
「レシル、貴方は本当は、魔界の王なのでしょう。ただの魔族ではなく」
レシルは固まる。
魔王であることは一度たりとも言ったことがない。
「そして貴方は、10年前、民のための王になることを決心した」
「ああ……そうだ」
「ごめんなさい。せっかくそう決心した貴方をここに留めさせているのは、私なんでしょう?」
「どうして翡月が謝るんだ。私は君といることが嬉しい。私だって幸せなんだ。それに魔族の時は長いから大丈夫だよ。実際私がいなくても優秀な王佐がいる」
長い人生の中で翡月が存在するのは今という時間しかない。
せめてその間だけでも、レシルは魔界のことなど忘れ、“家族”と共にいたかった。
「そうね…魔族は、私たちなんかでは想像もつかないくらい、長い時を生きるのね……」
「…………翡月、私は一生」
「月華は?」
「月華? ……そうだな、魔族の長命は純血だけにしか現れないと以前書物で読んだことがある。実際に人間と同じ速さで育っていて魔族と違うから、寿命も人間と同じだろう」
「そう……残念ね。せめて月華ぐらい、貴方と同じ時を生きて、貴方の傍にいられたら良かったのに」
それができないというのなら。
ねえ、レシル。
忘れてね。
私が死んだら、忘れてね。
そして今度は、生涯を共に生きることができる人を、見つけてね――。
「ねえ、レシル」
庭で娘が家臣の子どもたちと遊ぶのを眺めながら、翡月は問いかけた。
「なんだ?」
「ありがとう」
レシルは苦笑する。
「何が」
「出会ったときのこと、覚えてる?」
「勿論。忘れるわけがないだろう」
寧ろどうしてそんな話を突然するんだと、そう思ったけれどレシルは口にしなかった。
「ある日突然貴方がこの城に現れたの」
「そうだったな。突然魔族に会ったというのに、翡月も月辰も動じずに私と向かい合った」
「怖くなかったもの。そうね……少し、可哀想だった」
「私が?」
「何かを必死に探していたの。それを求めてやってきたのに、私たち2人を見て困惑していたでしょう?」
「すごいな。そんなことまで分かったのか」
「私たちは期待外れだったのかしら」
「――それは違う」
迷っていた。
自分の王としての在り方に。
かけていた。
人間の世界の王に。
人間も魔族と同じであれば、諦めきれると思った。
本当は諦めたくなどなかったのに。
「期待外れなんかじゃない。期待以上だったよ、翡月は」
諦めるどころか、諦めない意志を固めさせてくれた。
翡月はくすくすと笑った。
「私、幸せだわ」
「そうか?」
「ええ。……レシル、これから訊くこと、嘘は吐かないでね」
「何……?」
「レシル、貴方は本当は、魔界の王なのでしょう。ただの魔族ではなく」
レシルは固まる。
魔王であることは一度たりとも言ったことがない。
「そして貴方は、10年前、民のための王になることを決心した」
「ああ……そうだ」
「ごめんなさい。せっかくそう決心した貴方をここに留めさせているのは、私なんでしょう?」
「どうして翡月が謝るんだ。私は君といることが嬉しい。私だって幸せなんだ。それに魔族の時は長いから大丈夫だよ。実際私がいなくても優秀な王佐がいる」
長い人生の中で翡月が存在するのは今という時間しかない。
せめてその間だけでも、レシルは魔界のことなど忘れ、“家族”と共にいたかった。
「そうね…魔族は、私たちなんかでは想像もつかないくらい、長い時を生きるのね……」
「…………翡月、私は一生」
「月華は?」
「月華? ……そうだな、魔族の長命は純血だけにしか現れないと以前書物で読んだことがある。実際に人間と同じ速さで育っていて魔族と違うから、寿命も人間と同じだろう」
「そう……残念ね。せめて月華ぐらい、貴方と同じ時を生きて、貴方の傍にいられたら良かったのに」
それができないというのなら。
ねえ、レシル。
忘れてね。
私が死んだら、忘れてね。
そして今度は、生涯を共に生きることができる人を、見つけてね――。
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書きたいエピソードだけを書いていったら、一体何の話なのかも分からないぐだっぐだな話になりました^^;
しかも予想以上に…。せめて話を短編にして分ければ良かったなぁ。反省。
サイトに再アップするときは綺麗にまとめたいです^^
ということで今回は最後までこのまま突っ走ります!笑”
----------------------------------------------
「ちーちーうーえー」
「重いよ、月華(げっか)」
朝からベッドの上で乗りかかって来た自分の子どもにレシルは微笑みかける。
レシルと翡月が結婚して10年あまりが過ぎた。娘の月華は4歳になる。
「母上は?」
「母上はもうお仕事!」
「そっか。寝坊しちゃったな」
「父上もお仕事!」
「何すればいい?」
「遊ぶー!」
「はいはい。でもそれもまだ待ってな。急ぎの仕事がないか月辰に確認してくるから」
「ないよ」
タイミングよく月辰が寝室に入って来た。
「おはよう、レシル。今日は何もないから、月華の相手をしてやって。最近姉上もレシルも忙しかったからすねているみたいなんだ」
「ああ、分かった」
「姉上も今日の仕事は終わりにするから。後は任せて」
「悪いな」
月辰がそれだけを報告して部屋を出て行くと、レシルも月華の手を引いて廊下に出た。
「父上どこに行くの?」
「母上をお迎えに」
「母上お迎えしてどこに行くの?」
「うーん、お庭をお散歩でもしようか」
「お散歩してどこに行くの?」
「お前最近質問ばかりで話しづらいな……そういう年頃か」
「父上月華嫌いなの?」
「嫌いなわけないよー。あ、翡月!」
「母上ー!」
廊下の向こうで翡月を発見し、月華が駆け寄る。
翡月はしゃがんでそれを迎え、娘を抱き上げた。
「月華。父上を起こしてくれたの? お寝坊さんで困ったものね」
「困ったものねー」
レシルは翡月から月華を受け取る。
「月辰から聞いたか?」
「ええ。今日は休養を取るようにと」
「のんびり庭にでも行こうかと思うけど、どうかな」
翡月は微笑んだ。
「素敵ね」
しかしその笑顔にレシルは違和感を覚える。
「疲れてるのか?」
「え?」
「顔色が悪い。大人しく部屋で――」
「まぁひどい。レシルだけ月華とお庭で遊ぶの?」
「いや、翡月がいいんならいいんだが……」
何故だろう。
胸に不安が募っていく。
しかも予想以上に…。せめて話を短編にして分ければ良かったなぁ。反省。
サイトに再アップするときは綺麗にまとめたいです^^
ということで今回は最後までこのまま突っ走ります!笑”
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「ちーちーうーえー」
「重いよ、月華(げっか)」
朝からベッドの上で乗りかかって来た自分の子どもにレシルは微笑みかける。
レシルと翡月が結婚して10年あまりが過ぎた。娘の月華は4歳になる。
「母上は?」
「母上はもうお仕事!」
「そっか。寝坊しちゃったな」
「父上もお仕事!」
「何すればいい?」
「遊ぶー!」
「はいはい。でもそれもまだ待ってな。急ぎの仕事がないか月辰に確認してくるから」
「ないよ」
タイミングよく月辰が寝室に入って来た。
「おはよう、レシル。今日は何もないから、月華の相手をしてやって。最近姉上もレシルも忙しかったからすねているみたいなんだ」
「ああ、分かった」
「姉上も今日の仕事は終わりにするから。後は任せて」
「悪いな」
月辰がそれだけを報告して部屋を出て行くと、レシルも月華の手を引いて廊下に出た。
「父上どこに行くの?」
「母上をお迎えに」
「母上お迎えしてどこに行くの?」
「うーん、お庭をお散歩でもしようか」
「お散歩してどこに行くの?」
「お前最近質問ばかりで話しづらいな……そういう年頃か」
「父上月華嫌いなの?」
「嫌いなわけないよー。あ、翡月!」
「母上ー!」
廊下の向こうで翡月を発見し、月華が駆け寄る。
翡月はしゃがんでそれを迎え、娘を抱き上げた。
「月華。父上を起こしてくれたの? お寝坊さんで困ったものね」
「困ったものねー」
レシルは翡月から月華を受け取る。
「月辰から聞いたか?」
「ええ。今日は休養を取るようにと」
「のんびり庭にでも行こうかと思うけど、どうかな」
翡月は微笑んだ。
「素敵ね」
しかしその笑顔にレシルは違和感を覚える。
「疲れてるのか?」
「え?」
「顔色が悪い。大人しく部屋で――」
「まぁひどい。レシルだけ月華とお庭で遊ぶの?」
「いや、翡月がいいんならいいんだが……」
何故だろう。
胸に不安が募っていく。
広場での講演で民は翡月の口から国王の死を知らされた。
集まった人々は歓喜の声で湧いた。
更に戦士長の口からある“英雄”が――勿論、それが魔族であることも――紹介された。
しかしそんなことはお構いなしに、更に人々は湧きだった。
国王の死も、魔族も、喜んで受け入れる程戦争に苦しんでいたのだ。
人々に祝福されながら、翡月は王に就任する。
「レシル様」
当たり前のように城に滞在するレシルに、月辰は声をかけた。
戦争があっさりと終結した、夢のような現実から数日。英雄・レシルは未だ城に留まり続けている。
月辰は別にそれを咎めようとしたわけではない。彼もレシルに感謝している。
ベランダから外を眺めていたレシルは、月辰に微笑みかけた。
「なんだ? “レシル”でいいと言ったじゃないか」
「いえ。なかなか――」
「そういえばお前たち姉弟は家臣たちにも丁寧な言葉遣いで話す」
「少しでも敬意を示したいと思っています。とても王としては失格だったであろう父の下で働いて下さる皆様です」
「謙虚だな。王族とは思えない。でもそれも有りだろう。お前たち姉弟の人となりを、家臣たちも国民もよく慕っているようだ」
「有難いことです」
「それで、用は? そろそろ城を出た方がいいかな」
「いえ!」
月辰は必死に首を振った。
「違うんです、寧ろその逆で……」
「逆?」
「レシル様。魔族が1000年の時を生きるというのは、本当ですか?」
レシルは頷く。
「人間社会の時間に換算すると、確かに1000年だよ」
「ではそのうちのほんの数十年でいいんです。いえ、数年でもいい。
姉上の傍に、いてあげてはいただけませんか……?」
レシルは微笑んだ。
「ずるいな、月辰。私が翡月に惹かれていることぐらい、分かっててそう言うんだろうね」
「――確証はありませんでしたが」
「言われなくても翡月の傍にいるよ。たとえ彼女が嫌がってもね」
「姉上が嫌がるなど!」
「……分かっているよ」
月辰はほっと息を吐く。
「レシル様」
「これから翡月は王になる。明後日が就任式だ。父がやってきた行いの全てのツケが彼女に回る。国を、民を思う彼女はこれから忙しく走り回るんだろうね。私はそんな彼女を支えたい」
翡月は王となった。
そしてレシルと共に、今まで戦ってきた国を巡る。
やがてそうなることが必然だったように、自然に、2人は結婚した。
集まった人々は歓喜の声で湧いた。
更に戦士長の口からある“英雄”が――勿論、それが魔族であることも――紹介された。
しかしそんなことはお構いなしに、更に人々は湧きだった。
国王の死も、魔族も、喜んで受け入れる程戦争に苦しんでいたのだ。
人々に祝福されながら、翡月は王に就任する。
「レシル様」
当たり前のように城に滞在するレシルに、月辰は声をかけた。
戦争があっさりと終結した、夢のような現実から数日。英雄・レシルは未だ城に留まり続けている。
月辰は別にそれを咎めようとしたわけではない。彼もレシルに感謝している。
ベランダから外を眺めていたレシルは、月辰に微笑みかけた。
「なんだ? “レシル”でいいと言ったじゃないか」
「いえ。なかなか――」
「そういえばお前たち姉弟は家臣たちにも丁寧な言葉遣いで話す」
「少しでも敬意を示したいと思っています。とても王としては失格だったであろう父の下で働いて下さる皆様です」
「謙虚だな。王族とは思えない。でもそれも有りだろう。お前たち姉弟の人となりを、家臣たちも国民もよく慕っているようだ」
「有難いことです」
「それで、用は? そろそろ城を出た方がいいかな」
「いえ!」
月辰は必死に首を振った。
「違うんです、寧ろその逆で……」
「逆?」
「レシル様。魔族が1000年の時を生きるというのは、本当ですか?」
レシルは頷く。
「人間社会の時間に換算すると、確かに1000年だよ」
「ではそのうちのほんの数十年でいいんです。いえ、数年でもいい。
姉上の傍に、いてあげてはいただけませんか……?」
レシルは微笑んだ。
「ずるいな、月辰。私が翡月に惹かれていることぐらい、分かっててそう言うんだろうね」
「――確証はありませんでしたが」
「言われなくても翡月の傍にいるよ。たとえ彼女が嫌がってもね」
「姉上が嫌がるなど!」
「……分かっているよ」
月辰はほっと息を吐く。
「レシル様」
「これから翡月は王になる。明後日が就任式だ。父がやってきた行いの全てのツケが彼女に回る。国を、民を思う彼女はこれから忙しく走り回るんだろうね。私はそんな彼女を支えたい」
翡月は王となった。
そしてレシルと共に、今まで戦ってきた国を巡る。
やがてそうなることが必然だったように、自然に、2人は結婚した。
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