還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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「私が王になることなど誰も望みはしないし、誰も認めやしないでしょう」
兄さんは父上にそう告げると城を出て行った。
僕はベランダから門をくぐる兄さんの後ろ姿を見つめていた。
本当に出て行ってくれた――僕はほっと息を吐く。
「月央。兄さん、どうして突然出て行くなんて」
「兄さんは城に縛られてちゃ生きていけないんだよ。それより月雫。君が次期国王の身になったんだから、これからはちゃんとしなきゃね」
根が真面目な月雫は、兄さんさえいなければ家臣たちの信頼を回復するのも問題ないだろう。
月雫は不安そうに顔をゆがめる。
「月央も手伝ってくれるんだよな?」
「勿論」
君にはまだ、役に立ってもらうんだから。
父上は体調を崩しながらも思ったよりも生きていて、月雫はその間にきちんと勉強し、次期国王にふさわしいと皆に思われるようになった。
兄さんは城を出てから隣町で生活を始め、度々父上が兄さんを連れ戻そうとしたけれど、それを拒んでいるらしい。兄さんは雷の能力者だ。力ずくで連れ戻すのも至難の技だった。
兄さんが出て行ってから3年。
ついに父王・月波は崩御した。
盛大に執り行われた葬儀では兄さんらしき人物を見かけたけれど、彼が城に戻って来ることはなかった。
そして月雫が王となり、第52代目国王が誕生した。
兄さんは父上にそう告げると城を出て行った。
僕はベランダから門をくぐる兄さんの後ろ姿を見つめていた。
本当に出て行ってくれた――僕はほっと息を吐く。
「月央。兄さん、どうして突然出て行くなんて」
「兄さんは城に縛られてちゃ生きていけないんだよ。それより月雫。君が次期国王の身になったんだから、これからはちゃんとしなきゃね」
根が真面目な月雫は、兄さんさえいなければ家臣たちの信頼を回復するのも問題ないだろう。
月雫は不安そうに顔をゆがめる。
「月央も手伝ってくれるんだよな?」
「勿論」
君にはまだ、役に立ってもらうんだから。
父上は体調を崩しながらも思ったよりも生きていて、月雫はその間にきちんと勉強し、次期国王にふさわしいと皆に思われるようになった。
兄さんは城を出てから隣町で生活を始め、度々父上が兄さんを連れ戻そうとしたけれど、それを拒んでいるらしい。兄さんは雷の能力者だ。力ずくで連れ戻すのも至難の技だった。
兄さんが出て行ってから3年。
ついに父王・月波は崩御した。
盛大に執り行われた葬儀では兄さんらしき人物を見かけたけれど、彼が城に戻って来ることはなかった。
そして月雫が王となり、第52代目国王が誕生した。
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このままでは兄さんは、王位を継承できなくなってしまう。
父上はできる限りそうならないようにしたいらしいけど、今の状況じゃたとえ兄さんが王になっても、評判の悪い愚王のレッテルを貼らされてしまう。
次の日の夜、僕は兄さんの部屋を訪ねた。
「どうした? 月央」
「話があるんだ」
兄さんは僕に椅子をすすめた。
「話って?」
「父上ね、あまり体の調子が良くないらしいよ。だから次期国王のことを今本気で悩んでいるみたい」
「悩むって何をだよ。次期王様は俺だろ?」
僕は首を振った。
「父上はまだ兄さんを王に、って考えてるみたいだけど。家臣たちや民衆はそれを認めないかもしれない」
「どういうことだよ、それ」
「最悪な評判の兄さんは、たとえしきたりであっても。継承者としてふさわしいとは思われていない、できることなら別の人間に王位を継いで欲しいって思われてるんだよ」
「お前とか?」
「僕は王様って柄じゃない。月雫がいいね。僕は補助に回る。――だから兄さん、城を出て行って」
僕は兄さんを冷たく見据えた。
「兄さんはこの国には邪魔なんだ。暴動が起きる種なんだから」
「…………月央」
「継承権を破棄されるより、自分から捨てた方がましでしょ。だから自分から出て行った方が、兄さんのためでもあると思うよ」
「俺はこの城に居場所が無いのか」
「無いよ。ここに兄さんを支持する人は、誰も。父上だけはまだ諦めきれないようだけど、じきにその命も尽きる」
兄さんは静かに息を吐き、僕に微笑みかけた。
「前から思ってたけど、お前俺のこと嫌いだろ」
僕もにっこりと笑い返して言う。
「顔も見たくない程にね」
だから兄さん。
お願いだから――出て行って。
父上はできる限りそうならないようにしたいらしいけど、今の状況じゃたとえ兄さんが王になっても、評判の悪い愚王のレッテルを貼らされてしまう。
次の日の夜、僕は兄さんの部屋を訪ねた。
「どうした? 月央」
「話があるんだ」
兄さんは僕に椅子をすすめた。
「話って?」
「父上ね、あまり体の調子が良くないらしいよ。だから次期国王のことを今本気で悩んでいるみたい」
「悩むって何をだよ。次期王様は俺だろ?」
僕は首を振った。
「父上はまだ兄さんを王に、って考えてるみたいだけど。家臣たちや民衆はそれを認めないかもしれない」
「どういうことだよ、それ」
「最悪な評判の兄さんは、たとえしきたりであっても。継承者としてふさわしいとは思われていない、できることなら別の人間に王位を継いで欲しいって思われてるんだよ」
「お前とか?」
「僕は王様って柄じゃない。月雫がいいね。僕は補助に回る。――だから兄さん、城を出て行って」
僕は兄さんを冷たく見据えた。
「兄さんはこの国には邪魔なんだ。暴動が起きる種なんだから」
「…………月央」
「継承権を破棄されるより、自分から捨てた方がましでしょ。だから自分から出て行った方が、兄さんのためでもあると思うよ」
「俺はこの城に居場所が無いのか」
「無いよ。ここに兄さんを支持する人は、誰も。父上だけはまだ諦めきれないようだけど、じきにその命も尽きる」
兄さんは静かに息を吐き、僕に微笑みかけた。
「前から思ってたけど、お前俺のこと嫌いだろ」
僕もにっこりと笑い返して言う。
「顔も見たくない程にね」
だから兄さん。
お願いだから――出て行って。
僕には2人の兄がいた。
上の兄の名を曙月(しょげつ)、この国の王位継承者。
下の兄の名を月雫(つくな)、僕ととてもよく似た容姿の双子の兄。
曙月は王位継承者のくせに勉強嫌いで、いつも城を抜け出しては城の人間たちを困らせてばかりいた。
「兄さんは王になる気が無いの?」
月雫と一緒に城を出て遊びに行く相談をしていた兄さんに、僕は尋ねてみた。
兄さんはきょとんとした顔をしたけれどすぐに笑って答える。
「月央(つきお)、なりたいかなりたくないかじゃなくて俺がならなきゃいけないんだろ。第一子で生まれた奴の運命だってさ」
「それじゃ王にはなるんだ」
「なるなる。でも勉強は嫌いなんだよなー。体動かしてる方が性に合ってる」
「兄さんの今の評判最悪だよ」
兄さんは軽く笑った。
「知ってる。でもどうしようもないからさ。じゃあな、月央。俺たち2人抜け出したこと、勿論黙っててくれるよな?」
「どうせすぐにばれるだろうけど。黙ってるよ、行ってらっしゃい」
政務に関して一切の勉強をせず、遊んでばかりいる兄さん。
城内の家臣たちの間ではそんな次期国王を心配する声が上がり、噂は城下町を中心に方々へと広まっていた。
そんなある日、僕は父王・月波(つきは)に呼び出された。
「僕が、国王に?」
――冗談じゃないよ。
「父上、どうしてですか? 王位は第一子が継ぐのが決まりなんでしょう?」
「しかし不安の声が少なからずある。反対派も多いんだ。あの子が王位を継ぐと暴動が起きかねない程にな。それはいつも曙月についてまわっている月雫も同じこと。しかし真面目なお前なら誰も文句は言うまい」
「でも」
「分かっている。しきたりというものがあることは。だから私は出来る限り曙月に継いでもらいたい。しかし別の道があることを、お前も覚悟していて欲しいんだ」
「……承知しました」
冗談じゃない。
冗談じゃないよ。
僕じゃ駄目なんだ。
兄さんじゃないと、駄目なんだ。
上の兄の名を曙月(しょげつ)、この国の王位継承者。
下の兄の名を月雫(つくな)、僕ととてもよく似た容姿の双子の兄。
曙月は王位継承者のくせに勉強嫌いで、いつも城を抜け出しては城の人間たちを困らせてばかりいた。
「兄さんは王になる気が無いの?」
月雫と一緒に城を出て遊びに行く相談をしていた兄さんに、僕は尋ねてみた。
兄さんはきょとんとした顔をしたけれどすぐに笑って答える。
「月央(つきお)、なりたいかなりたくないかじゃなくて俺がならなきゃいけないんだろ。第一子で生まれた奴の運命だってさ」
「それじゃ王にはなるんだ」
「なるなる。でも勉強は嫌いなんだよなー。体動かしてる方が性に合ってる」
「兄さんの今の評判最悪だよ」
兄さんは軽く笑った。
「知ってる。でもどうしようもないからさ。じゃあな、月央。俺たち2人抜け出したこと、勿論黙っててくれるよな?」
「どうせすぐにばれるだろうけど。黙ってるよ、行ってらっしゃい」
政務に関して一切の勉強をせず、遊んでばかりいる兄さん。
城内の家臣たちの間ではそんな次期国王を心配する声が上がり、噂は城下町を中心に方々へと広まっていた。
そんなある日、僕は父王・月波(つきは)に呼び出された。
「僕が、国王に?」
――冗談じゃないよ。
「父上、どうしてですか? 王位は第一子が継ぐのが決まりなんでしょう?」
「しかし不安の声が少なからずある。反対派も多いんだ。あの子が王位を継ぐと暴動が起きかねない程にな。それはいつも曙月についてまわっている月雫も同じこと。しかし真面目なお前なら誰も文句は言うまい」
「でも」
「分かっている。しきたりというものがあることは。だから私は出来る限り曙月に継いでもらいたい。しかし別の道があることを、お前も覚悟していて欲しいんだ」
「……承知しました」
冗談じゃない。
冗談じゃないよ。
僕じゃ駄目なんだ。
兄さんじゃないと、駄目なんだ。
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