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還空論 HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。 ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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 「今年も不作だ。どうしよう? こんなこと初めてだ」
 月雫が弱音を吐いた。彼が見ている書類は国内のあらゆる地方から届いた嘆願書だ。
 ロン・コハク王国始まって以来の飢饉。それは周辺諸国も同じことで、どの国も自国のことで精いっぱい、援助を望めるわけもない。
 「月央、聞いてる?」
 「聞いてるよ」
 「国中に食べ物が足りてない。どうやりくりしても無理そうだ。どうすればいいだろう? 城の食料ももうすぐ無くなるっていうし」
 僕は微笑んで答える。
 「じゃあまずは城の食料を確保しなきゃね。国中の食物をかき集めて保管しよう。そうすればひとまず僕たちが飢えることはないよ」
 「本気で言ってるのか?」
 「本気だよ。月雫だって死にたくないでしょ」
 月雫は僕に近づいてきて両肩を掴んだ。
 「どうしたんだよ、月央。お前1年くらい前に兄さんに会いに行ってからずっとおかしいよ。冷たくて、何考えてるのか分かんない!」
 「何考えてるのかって?」
 僕は嘲笑した。
 「月雫が僕の考えてることを分かった例しなんてないくせに、よく言えた台詞だね」
 「月央…!」
 「どうするの? 国王様。食料集めるの、集めないの。僕たち死ぬよ」
 「集めることは……できない。自分だけ助かろうとすることなんてできない。別の道を探すよ…!」
 「そう」
 僕は王の執務室を出た。そして自分の部屋に向かう。
 月雫が僕を追いかけて来て言う。
 「どうした?」
 「気遣ってくれるの? 数年前までは兄さんとばかりいて、僕のこと知ろうともしなかったくせに」
 「何を」
 「僕はずっと1人でいた。兄さんと月雫みたいに遊びまわれる程体が丈夫じゃなかったから。いつも1人ぼっちで、唯一接してくれたのが“あいつ”だった」
 「誰……?」
 「君も兄さんと同じく覚えてないの?

 ――2人が殺したくせに」

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 ある日、僕は兄さんを訪ねた。
 「顔も見たくないんじゃなかったのか?」
 兄さんはそう言って笑って迎えてくれた。そして家の中に招いてお茶を出してくれる。
 「子どもが生まれたって聞いて」
 「ああ、お前の甥だよ。向こうの部屋で寝てる。見る?」
 僕は首を振った。
 「それじゃあ、お邪魔しました」
 「月央」
 「……何?」
 「いや、やっぱり何でもない。月雫は元気か?」
 「元気だよ」
 「最近天候がおかしくてあまり作物が採れないんだ。なんとかしてくれって伝えておいてくれ」
 「分かった」
 礼をし、立ち去ろうとした僕を兄さんはもう一度呼び止めた。
 「月央」
 「まだ何か用があるの?」
 「俺、思い出したんだ。お前に嫌われてる理由」
 「――“思い出した”…?」
 僕は目を瞠った。
 「はっ信じられない…! だったら今まで忘れてたって言うの?」
 「それは…っ」
 「兄さんにとってはその程度のことだった? 僕、馬鹿みたいだ…!」
 「月央。聞いて――」
 「兄さんも月雫も、あれから特に変わった様子が無かったのはその所為なんだね、忘れてたんだ!」
 兄さんは俯く。
 「言い訳はできない。事実その通りだ」
 僕は赤ん坊がいるという部屋に向かった。
 「月央!」
 そこでは赤ん坊が眠っていて、兄さんの奥さんらしき女性がいた。
 僕は腰にある剣に手をかける。
 「月央!!」
 バチっと音がして僕は壁に叩きつけられた。背中が熱い。兄さんの雷の能力だ。
 兄さんはすぐに駆け寄って来て僕を抱き起こす。
 「ごめん…ごめんな」
 「馬鹿みたいだ……」
 涙が出て来た。
 それを見て女性が白い布を差し出してくれた。
 兄さんの奥さん。
 兄さんに愛された人。

 “あいつ”が望んだ場所。

 なのにあいつのことを兄さんはあっさりと忘れていた。
 あんまりじゃないか。

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 兄さん、貴方はどうしているだろう。
 本当に城に姿を見せないのは、僕の所為ですか。
 僕が“顔も見たくない”と言ったから。



 「なー月央?」
 王の執務室。ふと月雫が話しかけて来た。
 「何。口動かしてる暇あったら手を動かして、国王様」
 「兄さんどうしてると思う?」
 僕は書類整理をしていた手を止めた。
 「知らないよ、僕は」
 「でも調べさせてるだろ、兄さんのこと。人を雇って逐一報告させて。出て行った兄さんのことが心配なんだ」
 「そういうわけじゃないけど」
 さて、あとはタイミング。
 好機を逃さず、動くときには動く。

 黙って口を閉じてて、月雫。
 君は王でいる以外僕には何の意味もない。
 ――兄さんが戻って来る時まで、王でいてくれる以外はね。

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