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還空論 HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。 ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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 曙月様はきっと、立派な王様になってくれるよね。

 そうかなぁ。
 兄さん遊んでばっかりだけど。

 あら、月央はそう思わないの?

 思うよ。
 春花がそう言うんなら、そう思うよ。

 きっと素敵な王様になってくれるの。
 歴史に名を残すような、ね。



 「兄さん助けて!」
 僕は兄さんの家に駆け込んだ。
 「兄さん、助けて! 月雫どうかしちゃったんだ。民のことなんて何も考えちゃいない、自分だけが助かればいいなんて思ってて、僕の言うことなんて耳を貸してくれない! もう後は、月雫を王位から引きずりおろすしか方法はないんだよ!」

 兄さんは僕の言葉を信じて蜂起することを決めた。武器は城の物を僕がこっそりと流した。
 怒りがたまっていた民衆たちはあっという間にその流れに乗って、蜂起の規模はどんどん膨れ上がっていった。

 そして蜂起は成功する。
 僕は兄さんの頭上に王冠をかぶせた。
 これで兄さんは“英雄”だ。
 歴史に名を残す英雄だ。
 きっと皆から慕われるいい王様になる。
 飢饉を乗り切るのは大変だろうけど、僕は数年かけて、遠く離れた王国からの援助を取り付けた。じきに援助がやって来るはずだ。
 代わりに最近僕が発見した鉱脈の権利を渡したけれど、今はそのことはどうでもいいだろう。



 春花、見た?
 兄さんが王様になった瞬間。

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 古い塔は4階あって、最上階には大きな窓があった。
 景色がいい。城自体が高台にあるおかげで城下町を見渡せる。それが目的でつくられたのかもしれない。
 でも古くなって老朽化が進んだから、危なくて今は使われていないんだ。
 「どんな気持ちだったんだろうね、彼女。高いところから落ちて、すごく怖かっただろうな」
 「月央……あの女の子とお前がそんなに親しかったなんて」
 「知らなかったでしょ? 月雫は僕にあまり興味がなかったから」
 「そんなこと!」
 僕は月雫にゆっくりと近づいてその手を取り、窓際まで連れて来た。
 「見てよ月雫。いい眺め。城下町にはたくさんの人がいるね」
 「ああ、そうだな……」
 「で、どうする月雫。食料のこと」
 「やっぱり集めるのには反対だ。だって――」
 僕は月雫の背中を押した。


 ねえ、怖かった?
 ――彼女が感じた思いだよ。


 僕は“月雫”になった。双子だったのは都合がいい。
 誰も僕が月央であるとは気付かない。
 誰も気づかない――古びた塔の陰で月雫が眠っていることを。
 月央は辺境の町や村の様子を見に行ったと言ったら誰もが信じてくれた。
 僕の邪魔をする者はいない。

 僕は精一杯愚かな王になる。

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 彼女の名前は春花(しゅんか)。
 とある家臣の娘で、たまに城にやって来ていた。
 そしてよく僕と一緒にお喋りをして過ごした。
 兄さんと月雫は彼女のことをあまり知らなかった。2人はいつも城の外を遊びまわっていたから。
 でも春花は一度何かのパーティで見かけた兄さんのことが好きだった。
 きっと度々父親にくっついて城に来ていたのも、僕とお喋りしに来るのではなくて、兄さんに会えるかもしれないという淡い期待からだったのだろう。
 それでも僕は嬉しかった。春花が来ると1人じゃない。楽しくて、彼女が来るのをいつも心待ちにしていた。
 春花と知り合って2年ほど経ったある日、僕は彼女にスカーフを贈った。綺麗なピンクの花の絵が描かれたスカーフで、彼女はそれを大事そうに首に巻いてくれた。

 しかし、彼女は死んでしまった。

 裏庭にある大きな木の下で死んでいたらしい。手には僕が贈ったスカーフが握り締められていた。
 風に飛ばされて木の枝に引っかかったそれを取ろうとして、木から落ちてしまったんだろうということだった。
 頭を強く打って打ち所が悪かったのだろうとも誰かが言っていた。
 僕は途方に暮れてしまった。
 ――あんな物、贈らなければ良かった。
 後悔して涙が止まらなかった。

 「君と兄さんの会話を聞くまでは。ね」
 僕は話しながら今度は裏庭の塔へと向かっていた。何のためにつくられたのか分からない古い塔で、その辺りは人気が全くない。
 月雫は黙ってついて来ていた。

 「兄さん、どうしよう。女の子…死んじゃった」
 「落ち着けって。幸い誰も俺たちが関わったこと気付いてない」
 「俺たちが意地悪してスカーフを木にかけなかったら」
 「ゲームだって言っただろ。大体あの子も嬉しそうに俺たちのゲームに参加してきたんだから、自己責任だろ」
 「でも落ちた時まだ生きてたよ。逃げずにすぐに誰か呼んで来て治療してもらってたら……」
 「そうしたら女の子が落ちたのが俺たちの所為だって思われて大変なことになってただろ」

 ――名前も知らないくせに。
 自分たちが死に追いやった女の子のこと何も知らないくせに。
 彼女がどんなに兄さんと話をしたがっていたか知らないくせに……!!

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