還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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関統吾は、ゆっくりと階段を下りていた。
白衣など脱ぎ捨てている。もう必要のない物だ。
校舎から出ると、煙草をふかせながら空を仰ぐ石町志朧の姿があった。
「煙草、吸ったのか」
関は彼に話しかけた。煙草を吸う人間だったのかと、そういう意味だ。
石町は苦笑する。
「研究所は禁煙だろう」
「所外では吸っていたと?」
「いや、そういうわけではないが」
「意味が分からないな。だったらその煙草はどうした?」
「1本だけだ。肌身離さず持っていたのは、1本だけ」
石町はすっかり短くなったそれを地面に投げ捨て、踏みつぶして火を消した。
もう要らなくなったはずの吸い殻を手に取ると懐かしそうに見つめる。
関はなんとなくその様子を眺めていた。
「関」
ふと石町が言う。
「顛末は、盗聴器で聞いた話と相原から聞いた話で、なんとなく分かった」
「そうか」
「お前は篠塚宗士の息子だったんだな。あの神谷とかいう助手も」
「――ああ。父のことはよく知らないけれど」
「私は知っているよ。あの人のことは、十分過ぎるくらいに。しかしお前も神谷も似てないな」
「俺もあいつもたぶん母親似だ」
「たぶん?」
関は笑う。
「確信持って言えるほど、両親のことを知らない」
「そう、か。まぁ、少なくともお前は外見も中身も父親には似ていない」
「ありがとう。最高の賛辞だよ」
「嫌いか?」
「さあね――好きではない」
「だろうな」
石町はライターを取り出した。
関は首を傾げる。
「もう1本吸うのか?」
「いや、もう煙草は持っていない」
石町は答えると、吸い殻に火を付けて更に燃やし尽くしてしまった。
灰だけになってもう、原形など分からない。
「これはな、お前の父親が好きだった銘柄の煙草だ」
「へえ」
「昔、1本貰ったんだ」
「それを大事に持っていたのか?」
「大事に? 冗談だろう。戒めだよ、自分への。自分は全てを篠塚宗士には支配されないという、決意だ」
「煙草の銘柄ぐらいで」
「もし吸って自分がそれを気に入ってしまったらどうする?」
「どうもこうもない」
「あるんだよ。悪あがきでもいいから思いたかったんだ。私は自分で篠塚の下に就くことを決めたけれど、あの男とは違うんだと」
関は俯き、静かに問う。
「それで、どうだった? 気に入ったのか?」
石町は微笑んだ。
「もう二度と吸いたくない」
その時遠くからたくさんのパトカーのサイレンが聞こえてきた。
「覚悟はいいか? 関統吾」
爆破事故で跡形もなくなったはずの葉野高校。
閉鎖されていたその場所に、ついに“現実”がやって来る。
白衣など脱ぎ捨てている。もう必要のない物だ。
校舎から出ると、煙草をふかせながら空を仰ぐ石町志朧の姿があった。
「煙草、吸ったのか」
関は彼に話しかけた。煙草を吸う人間だったのかと、そういう意味だ。
石町は苦笑する。
「研究所は禁煙だろう」
「所外では吸っていたと?」
「いや、そういうわけではないが」
「意味が分からないな。だったらその煙草はどうした?」
「1本だけだ。肌身離さず持っていたのは、1本だけ」
石町はすっかり短くなったそれを地面に投げ捨て、踏みつぶして火を消した。
もう要らなくなったはずの吸い殻を手に取ると懐かしそうに見つめる。
関はなんとなくその様子を眺めていた。
「関」
ふと石町が言う。
「顛末は、盗聴器で聞いた話と相原から聞いた話で、なんとなく分かった」
「そうか」
「お前は篠塚宗士の息子だったんだな。あの神谷とかいう助手も」
「――ああ。父のことはよく知らないけれど」
「私は知っているよ。あの人のことは、十分過ぎるくらいに。しかしお前も神谷も似てないな」
「俺もあいつもたぶん母親似だ」
「たぶん?」
関は笑う。
「確信持って言えるほど、両親のことを知らない」
「そう、か。まぁ、少なくともお前は外見も中身も父親には似ていない」
「ありがとう。最高の賛辞だよ」
「嫌いか?」
「さあね――好きではない」
「だろうな」
石町はライターを取り出した。
関は首を傾げる。
「もう1本吸うのか?」
「いや、もう煙草は持っていない」
石町は答えると、吸い殻に火を付けて更に燃やし尽くしてしまった。
灰だけになってもう、原形など分からない。
「これはな、お前の父親が好きだった銘柄の煙草だ」
「へえ」
「昔、1本貰ったんだ」
「それを大事に持っていたのか?」
「大事に? 冗談だろう。戒めだよ、自分への。自分は全てを篠塚宗士には支配されないという、決意だ」
「煙草の銘柄ぐらいで」
「もし吸って自分がそれを気に入ってしまったらどうする?」
「どうもこうもない」
「あるんだよ。悪あがきでもいいから思いたかったんだ。私は自分で篠塚の下に就くことを決めたけれど、あの男とは違うんだと」
関は俯き、静かに問う。
「それで、どうだった? 気に入ったのか?」
石町は微笑んだ。
「もう二度と吸いたくない」
その時遠くからたくさんのパトカーのサイレンが聞こえてきた。
「覚悟はいいか? 関統吾」
爆破事故で跡形もなくなったはずの葉野高校。
閉鎖されていたその場所に、ついに“現実”がやって来る。
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