還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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「優佳が、死んだだと…!!?」
庚は近くにあったグラスを地面に叩きつけた。
「何故だ…! 斎! 答えろ!」
斎は割れたグラスを一枚一枚拾いながら答える。
「私が、殺しました」
「何だと…!?」
庚はさっと剣を抜き、斎へと斬りかかった。
斎も剣を抜いてそれを受け止める。
「お前は何を考えている、斎!」
「私の考え、ですか…?」
「私の作る国を見たいのではなかったのか!」
「ええ、確かに。私はそう思っていました。ですがこの10年でよく分かりましたよ。
貴方にろくな国は作れない」
「な――っ」
「貴方は決して“狂王”にはなれません。まだ灯央様の方が余程“狂王”でした。それに」
斎は冷たい瞳で庚を見据えた。
「あの女(ひと)が貴方の物になるなんて――冗談じゃない」
狂王。
そう、狂王だ。
私はそれを求めていた。
だから灯央様を裏切った。
庚様の方が素晴らしい狂王になってくれると、そう思ったから。
では何故綸様を助けた?
綸様の中に、“狂王”の資質を見たから…?
「ああ、そうか。そういうことか。ようやく自分の行動の意味を掴めた気がするよ……」
「この状況でひとりごとか? 斎。私の剣の腕、知らぬお前ではあるまい?」
「ええ、よく知っています。しかし貴方は、私の剣の腕を知りません」
「それは……!」
「覚悟して下さい、庚さ――」
斎の言葉が止まった。剣を落とし、跪く。
「違う……私は、こんなことをしたいわけではない!」
「斎……?」
「綸様は狂王などではない! 私は灯央様を裏切りたくはなかった…!!」
斎の目から涙が零れた。
「何故私は、優佳さまをこの手で殺めてしまったのだろう――」
「お願いです、私はいくらでも協力します! ですからお兄様を探して…!」
黄凱の隣国・蒼游(そうゆう)。その田舎町で翏は十数人の男たちに向かって深々と頭を下げた。
「翏様、貴方をお上げ下さい!」
「そうだぜ翏。皇族が頭を下げるな」
そう言って愬は翏の頭を撫でた。
「愬さん……」
翏は顔を上げ、すがるような目を皆に向ける。
「何故、お兄様を探すのは駄目だと言うんですか?」
革命軍のリーダー・節里(せつり)は困ったように笑った。
「我々の目的は灯央様の御子でいらっしゃる貴女に皇帝になっていただくことです」
「私はただの小娘です! お兄様が生きてらっしゃるのなら、彼が皇帝になった方が…!」
節里はため息をついた。
「翏様にお聞かせするような話ではないと思っていましたが、どうやら話さねば納得していただけないようですね」
「何……?」
「我々は灯央様を尊び、庚様を憎む者。それが故に綸様には帝位について欲しくない――」
「どういう、こと?」
「綸様の父君は庚様。
それが答です」
「そんな……!?」
愬は咄嗟に翏の口を塞ぎ、笑った。
「本当に面白い国だな、黄凱ってのは」
「罪人が! 翏様に対する無礼は許さん!」
「黙れよ。今ここでお前たちの目の前で、翏の息の根を止めることだってできるんだぜ」
「―――っ」
「ま、そんなことはしねぇけど? 翏、お前の国でクーデターが起きたのはいつだ?」
愬は翏を開放する。
「10年前…です」
「そっか」
決まりだ。
こいつらの言う“綸様”ってのは、まさしく燐のことだ。
道理で翏を引き取ると言い張ったわけだ。
「でもそんなこと、教えてやる義理もないか」
俺の目的はただ1つ。
“斎に会う”――ただそれだけ。
庚は近くにあったグラスを地面に叩きつけた。
「何故だ…! 斎! 答えろ!」
斎は割れたグラスを一枚一枚拾いながら答える。
「私が、殺しました」
「何だと…!?」
庚はさっと剣を抜き、斎へと斬りかかった。
斎も剣を抜いてそれを受け止める。
「お前は何を考えている、斎!」
「私の考え、ですか…?」
「私の作る国を見たいのではなかったのか!」
「ええ、確かに。私はそう思っていました。ですがこの10年でよく分かりましたよ。
貴方にろくな国は作れない」
「な――っ」
「貴方は決して“狂王”にはなれません。まだ灯央様の方が余程“狂王”でした。それに」
斎は冷たい瞳で庚を見据えた。
「あの女(ひと)が貴方の物になるなんて――冗談じゃない」
狂王。
そう、狂王だ。
私はそれを求めていた。
だから灯央様を裏切った。
庚様の方が素晴らしい狂王になってくれると、そう思ったから。
では何故綸様を助けた?
綸様の中に、“狂王”の資質を見たから…?
「ああ、そうか。そういうことか。ようやく自分の行動の意味を掴めた気がするよ……」
「この状況でひとりごとか? 斎。私の剣の腕、知らぬお前ではあるまい?」
「ええ、よく知っています。しかし貴方は、私の剣の腕を知りません」
「それは……!」
「覚悟して下さい、庚さ――」
斎の言葉が止まった。剣を落とし、跪く。
「違う……私は、こんなことをしたいわけではない!」
「斎……?」
「綸様は狂王などではない! 私は灯央様を裏切りたくはなかった…!!」
斎の目から涙が零れた。
「何故私は、優佳さまをこの手で殺めてしまったのだろう――」
「お願いです、私はいくらでも協力します! ですからお兄様を探して…!」
黄凱の隣国・蒼游(そうゆう)。その田舎町で翏は十数人の男たちに向かって深々と頭を下げた。
「翏様、貴方をお上げ下さい!」
「そうだぜ翏。皇族が頭を下げるな」
そう言って愬は翏の頭を撫でた。
「愬さん……」
翏は顔を上げ、すがるような目を皆に向ける。
「何故、お兄様を探すのは駄目だと言うんですか?」
革命軍のリーダー・節里(せつり)は困ったように笑った。
「我々の目的は灯央様の御子でいらっしゃる貴女に皇帝になっていただくことです」
「私はただの小娘です! お兄様が生きてらっしゃるのなら、彼が皇帝になった方が…!」
節里はため息をついた。
「翏様にお聞かせするような話ではないと思っていましたが、どうやら話さねば納得していただけないようですね」
「何……?」
「我々は灯央様を尊び、庚様を憎む者。それが故に綸様には帝位について欲しくない――」
「どういう、こと?」
「綸様の父君は庚様。
それが答です」
「そんな……!?」
愬は咄嗟に翏の口を塞ぎ、笑った。
「本当に面白い国だな、黄凱ってのは」
「罪人が! 翏様に対する無礼は許さん!」
「黙れよ。今ここでお前たちの目の前で、翏の息の根を止めることだってできるんだぜ」
「―――っ」
「ま、そんなことはしねぇけど? 翏、お前の国でクーデターが起きたのはいつだ?」
愬は翏を開放する。
「10年前…です」
「そっか」
決まりだ。
こいつらの言う“綸様”ってのは、まさしく燐のことだ。
道理で翏を引き取ると言い張ったわけだ。
「でもそんなこと、教えてやる義理もないか」
俺の目的はただ1つ。
“斎に会う”――ただそれだけ。
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俺と詩紀が家に帰ると、そこには誰もいなかった。
「愬……? おい! 翏!?」
家中の部屋を片っ端から探してみたがどこにもいない。
「きっと2人で出かけているんだろう」
詩紀はそう言って椅子に座った。
「だといいが」
でももしも2人がこのまま帰って来なかったら…?
「それよりもさっきの話。燐、あんたはずっとここにいるつもり?」
「そんなつもりは…!」
「確かにここは居心地がいい。でもやっぱり――」
「おい! いるか!?」
急にドアを叩く音がして俺たちは顔を見合せながらドアを開けた。
「何?」
そこにはよく見る町民の1人がいた。
「町の近くをすげーもんが通ってるんだって!」
「だから、何?」
「どっかの国の軍隊だよ! 間近で見るとかっこいいよなぁ」
「どこかの国って……」
おかしいだろ、それは。
軍隊がこの町に近づくなんてあり得ない。
「詩紀、俺ちょっと見てくる」
「行ってこい」
俺が家を飛び出すと、詩紀は知らせに来た男に向かって微笑んだ。
「町中の奴らを集めろ。――俺の頼み、聞けるよな?」
軍隊がこの町の近くを通る?
ここはどこの国にも属さない町。
表立って触れないことが常識なのに。
国家と密接に関わる軍隊がこの町に近づくなんて…!
とりあえず町を出ようとする野次馬数人を捕まえる。
「町を出るな!」
「り、燐…? 俺たちはただ、近くを通ってるっていうあれを見に……」
俺は剣を抜いた。
「それを見に行くなと言っているんだ」
「おいおい、ただ見に行くだけ――」
「俺の言うことが聞けないのか!」
俺は剣を振り上げた。
「わ、分かったよ、燐…っ。帰るから…そんなに怒るなって…」
「早く行け! 町の奴らにも町から出るなと伝令を回すんだ!」
「何かやばいことなのか?」
「――それを調べに俺が行く。何事もないならまた知らせるから、今はまだ町の中にいてくれ」
「おーい!」
町の方から大声が聞こえてきた。
「詩紀が招集かけてるぞ! 早いとこ集まった方がいいんじゃないかぁ!?」
「だそうだ。早く戻れ。詩紀を怒らせると面倒なことになる」
「ははっ。それを燐、お前が言うのか? 詩紀だけじゃない。お前も愬も、怒らせたくない相手だよ」
そう言うと彼らは戻って行った。
俺は綺麗に揃った足音のする方向へと向かう。
しばらくすると隊列を組んだ兵士たちが見えてきた。俺は木の陰に隠れてそれを見る。
掲げている旗は国旗だろうか?
「まさか、あれは……」
あの国旗は、紅雪(こうせつ)…!?
中央にある大国じゃないか!
何故こんなところにっ!
「そこにいるのは誰だ!!」
――見つかった…!!
「愬……? おい! 翏!?」
家中の部屋を片っ端から探してみたがどこにもいない。
「きっと2人で出かけているんだろう」
詩紀はそう言って椅子に座った。
「だといいが」
でももしも2人がこのまま帰って来なかったら…?
「それよりもさっきの話。燐、あんたはずっとここにいるつもり?」
「そんなつもりは…!」
「確かにここは居心地がいい。でもやっぱり――」
「おい! いるか!?」
急にドアを叩く音がして俺たちは顔を見合せながらドアを開けた。
「何?」
そこにはよく見る町民の1人がいた。
「町の近くをすげーもんが通ってるんだって!」
「だから、何?」
「どっかの国の軍隊だよ! 間近で見るとかっこいいよなぁ」
「どこかの国って……」
おかしいだろ、それは。
軍隊がこの町に近づくなんてあり得ない。
「詩紀、俺ちょっと見てくる」
「行ってこい」
俺が家を飛び出すと、詩紀は知らせに来た男に向かって微笑んだ。
「町中の奴らを集めろ。――俺の頼み、聞けるよな?」
軍隊がこの町の近くを通る?
ここはどこの国にも属さない町。
表立って触れないことが常識なのに。
国家と密接に関わる軍隊がこの町に近づくなんて…!
とりあえず町を出ようとする野次馬数人を捕まえる。
「町を出るな!」
「り、燐…? 俺たちはただ、近くを通ってるっていうあれを見に……」
俺は剣を抜いた。
「それを見に行くなと言っているんだ」
「おいおい、ただ見に行くだけ――」
「俺の言うことが聞けないのか!」
俺は剣を振り上げた。
「わ、分かったよ、燐…っ。帰るから…そんなに怒るなって…」
「早く行け! 町の奴らにも町から出るなと伝令を回すんだ!」
「何かやばいことなのか?」
「――それを調べに俺が行く。何事もないならまた知らせるから、今はまだ町の中にいてくれ」
「おーい!」
町の方から大声が聞こえてきた。
「詩紀が招集かけてるぞ! 早いとこ集まった方がいいんじゃないかぁ!?」
「だそうだ。早く戻れ。詩紀を怒らせると面倒なことになる」
「ははっ。それを燐、お前が言うのか? 詩紀だけじゃない。お前も愬も、怒らせたくない相手だよ」
そう言うと彼らは戻って行った。
俺は綺麗に揃った足音のする方向へと向かう。
しばらくすると隊列を組んだ兵士たちが見えてきた。俺は木の陰に隠れてそれを見る。
掲げている旗は国旗だろうか?
「まさか、あれは……」
あの国旗は、紅雪(こうせつ)…!?
中央にある大国じゃないか!
何故こんなところにっ!
「そこにいるのは誰だ!!」
――見つかった…!!
「遅いよな、あの2人。どこまで買い物に行ってんだか」
愬は立ち上がり背伸びをした。
「あの……」
翏が話しかけると愬は再び座りなおして笑う。
「何?」
「――この町って……」
「ああ、やっぱりここがどういうところかきちんと把握してないんだな。言ったろ? 罪人の町だって」
「それは…聞きましたが……」
「罪人の中でも大っぴろに処刑できない奴がこの町に送られてくる」
「では私も、その1人になるということでしょうか?」
「…………だろうな」
「訳が分かりません。では何故“今”なんでしょう? 私がこの町に来るべき者だというのなら、10年前に来ているはずでした。何故今になって突然私はここに――」
「10年前にここに来るはずだった? どうやらお前もいろいろと複雑みたいだな」
とその時、玄関の扉が勢いよく開いた。
咄嗟に愬は剣を抜いて構える。
現れたのは5人程の体格のいい男たち。
「翏様はここにいらっしゃるか…!?」
そう問われ、愬は男たちに剣を向けたまま翏を見た。
「知り合い?」
「いえ……分かりません」
翏の姿を確認すると、男たちは一斉に片膝を地に付けて礼をする。
「お迎えに上がりました。どうか翏様、我々と共に来て下さい。我々の象徴となっていただきたいのです…!」
「象徴……?」
「はい。我々は革命軍を組織する者。皇帝・庚を討ち果たすことを目標としている者たちです」
「何を――革命…?」
「庚様に御退位いただき、灯央様の直系の貴女に新しく皇帝となっていただくべく、我々は――」
「ちょっと待って…!」
翏は男たちに歩み寄る。
「私が、皇帝に?」
「はい。残念ながら綸様の居所は10年経った今、掴むことができません」
「お兄様は亡くなったのではなかったの…?」
「いえ、そういう噂もございますが正確には…。ただ綸様の御遺体を見たという者は誰ひとりとしていません」
「お兄様は、もしかすると生きてらっしゃるのかもしれない…?」
「その通りです。しかし翏様、我々には綸様をお探しする時間がございません。皇帝はとんでもないことを始めようとしています。黄凱を強い国にするという名目で国中の男たちを徴兵し、そして…!!」
「そして?」
「あの男は! 黄凱を滅ぼす気なんだ! 国を治める気など毛頭なかった! あいつは…!!」
「面白そうな話だな」
愬は剣を鞘にしまい、くすくすと笑った。
「そっか、お前は黄凱のお姫さんか」
「愬さん…?」
「もっと話を詳しく聞かせてくれよ。黄凱には斎という宰相がいただろう? そいつは今、どうしてる?」
「優佳様、失礼します」
斎は優佳の部屋の扉を開けた。
「後宮は皇帝以外の男子は立ち入り禁止のはずでしょう? 斎」
「承知の上です」
「でもちょうど良かったわ。斎、あの子はどこにいるの?」
「翏様、ですか?」
「違う。綸に決まっているでしょう。灯央様が亡くなった今、翏がどうなろうと知ったことではないわ。綸は生きているのでしょう? 斎、あの子をどこへ連れて行ったの?」
「……お教えする代わりに、私は欲しい物があるんです」
「何? 何でも言って」
斎は剣を取り出し、優佳の胸へと突き刺した。
「斎……!」
「貴女の命が欲しいんです」
「な……ん……」
「綸様は今、烟梓の町にいるはずですよ」
だが既に優佳の命は息絶えていた。
「ああ、もう聞こえてはいませんか――」
愬は立ち上がり背伸びをした。
「あの……」
翏が話しかけると愬は再び座りなおして笑う。
「何?」
「――この町って……」
「ああ、やっぱりここがどういうところかきちんと把握してないんだな。言ったろ? 罪人の町だって」
「それは…聞きましたが……」
「罪人の中でも大っぴろに処刑できない奴がこの町に送られてくる」
「では私も、その1人になるということでしょうか?」
「…………だろうな」
「訳が分かりません。では何故“今”なんでしょう? 私がこの町に来るべき者だというのなら、10年前に来ているはずでした。何故今になって突然私はここに――」
「10年前にここに来るはずだった? どうやらお前もいろいろと複雑みたいだな」
とその時、玄関の扉が勢いよく開いた。
咄嗟に愬は剣を抜いて構える。
現れたのは5人程の体格のいい男たち。
「翏様はここにいらっしゃるか…!?」
そう問われ、愬は男たちに剣を向けたまま翏を見た。
「知り合い?」
「いえ……分かりません」
翏の姿を確認すると、男たちは一斉に片膝を地に付けて礼をする。
「お迎えに上がりました。どうか翏様、我々と共に来て下さい。我々の象徴となっていただきたいのです…!」
「象徴……?」
「はい。我々は革命軍を組織する者。皇帝・庚を討ち果たすことを目標としている者たちです」
「何を――革命…?」
「庚様に御退位いただき、灯央様の直系の貴女に新しく皇帝となっていただくべく、我々は――」
「ちょっと待って…!」
翏は男たちに歩み寄る。
「私が、皇帝に?」
「はい。残念ながら綸様の居所は10年経った今、掴むことができません」
「お兄様は亡くなったのではなかったの…?」
「いえ、そういう噂もございますが正確には…。ただ綸様の御遺体を見たという者は誰ひとりとしていません」
「お兄様は、もしかすると生きてらっしゃるのかもしれない…?」
「その通りです。しかし翏様、我々には綸様をお探しする時間がございません。皇帝はとんでもないことを始めようとしています。黄凱を強い国にするという名目で国中の男たちを徴兵し、そして…!!」
「そして?」
「あの男は! 黄凱を滅ぼす気なんだ! 国を治める気など毛頭なかった! あいつは…!!」
「面白そうな話だな」
愬は剣を鞘にしまい、くすくすと笑った。
「そっか、お前は黄凱のお姫さんか」
「愬さん…?」
「もっと話を詳しく聞かせてくれよ。黄凱には斎という宰相がいただろう? そいつは今、どうしてる?」
「優佳様、失礼します」
斎は優佳の部屋の扉を開けた。
「後宮は皇帝以外の男子は立ち入り禁止のはずでしょう? 斎」
「承知の上です」
「でもちょうど良かったわ。斎、あの子はどこにいるの?」
「翏様、ですか?」
「違う。綸に決まっているでしょう。灯央様が亡くなった今、翏がどうなろうと知ったことではないわ。綸は生きているのでしょう? 斎、あの子をどこへ連れて行ったの?」
「……お教えする代わりに、私は欲しい物があるんです」
「何? 何でも言って」
斎は剣を取り出し、優佳の胸へと突き刺した。
「斎……!」
「貴女の命が欲しいんです」
「な……ん……」
「綸様は今、烟梓の町にいるはずですよ」
だが既に優佳の命は息絶えていた。
「ああ、もう聞こえてはいませんか――」
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