還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
愛している。
そう思った女(ひと)には、既に恋人がいた。
恋人の名は庚親王。皇太子・灯央親王の弟君だった。
しかし彼女は灯央様と結婚した。
何故……?
だって貴女は今、庚様の御子を身籠ってらっしゃるのでしょう?
恥知らずな人だ。
違う。
悪いのは弟の恋人だと知りつつも奪った灯央様だ。
悪いのは庚様だろう?
だってあの人は、もう1人恋人がいた。
可哀そうな優佳様。
私が殺してあげましょうか。
死ねば自由になれる。
死は全てからの解放だ。
民に“死”を与えてあげる。
それこそが善き王だろう?
世間では“狂王”だと、噂されるだろうけど。
斎は目を覚ました。
「ここは……地下牢?」
そう呟くと、重々しい声が返ってくる。
「いかにも」
「庚様……!」
「斎。お前の望みは、狂王か」
斎はゆっくりと頷いた。
庚は苦笑する。
「私では駄目か」
「庚様は、灯央様以上の狂王にはなれません」
民は知らない。
夢のような幸せな国を作るために、灯央様が犠牲にした数多くのものを。
民は知らない。
平和に慣れ過ぎたこの黄凱は、近いうちに侵略されていただろうということを。
庚様が突然民を徴兵し鍛え始めたのは、何よりも民を守るため。
税を上げたのもそのためだ。
十分に作物が採れる今だからこそ、宮殿で食物を管理するために。
民に反乱を起こさせたのも、民が平和な夢から覚めるように。
「貴方は……優佳様を欲して灯央様を殺したわけではなかった」
「何を言う。私は優佳が目的だった」
「灯央様から民を守るために――」
「違う。兄上は善王だったと、皆そう信じているではないか」
「では何故、優佳様を殺した私をこうして生かしているのですか」
「―――…」
庚は何も答えず、黙って地下牢から出て行った。
「翏様をどこかへ連れて行ったのは、優佳様から翏様を守るため……?」
優佳様は翏様を煩わしく思っていた。
それを庚様は知っていた。
「貴方は狂王になど、なれやしない」
貴方は狂王を演じているだけだ。
優佳の体はまだ後宮のベッドの上に寝かせたままだった。
その周りを女官たちが涙を流しながら囲っている。
庚は優佳の体に近づき、そっとその頬に触れた。
「綺麗だ……」
傾国の美女だと、噂されるだけのことはある。
いくつ年を重ねても変わらない美しさ。
「本望だろう? 美しいまま逝けて……」
私は、貴女が欲しかった。
兄上に渡してしまったことを、心の底から後悔していた。
欲しくて欲しくて、ついに私はクーデターを起こした。
それも真実には変わらない。
人々は言うだろう。
善帝・灯央を弑し奉った私を、税を引き上げた私を、戦争のために賦役を課した私を、
とんでもない悪王だ、と。
それならそれでいいんだ。
灯央という善帝がいたことを、人々が支えとして生きていけるのなら。
兄上は善帝だったと、人々に信じさせ続けていく方がいい。
実際兄上は善き皇帝だった。
多くの民にとっては。
兄上はいちばんに民や国のことを考えていたのだから。
民や国のためにどうすべきかいつだって考えていたのだから。
ただ私は納得がいかなかった。
“1の犠牲で100を救う”
兄上が選んだこの方法に、どうしても納得がいかなかった。
ではその1の犠牲になった者たちは?
罪などないはずなのに、罪をでっちあげられ、処刑という名目で兄上に殺されていった者たちは?
人々は知らない。
彼らに罪がなかったことを、人々は知らない。
そればかりか兄上を褒め称える。
さすがは灯央様、どんな小さな悪も見逃さない。なんて立派な皇帝だろう、と。
領地を治める役人や貴族は兄上に悪事がばれることを恐れ、誠意をもって領地を治めようとする。
これが、恐怖政治以外のなんだと言えよう。
見せしめとしている者たちに罪がない分、恐怖政治よりも性質(たち)が悪い…!
多くの民にとっては確かに善帝だった。
しかし民は皆犠牲(いけにえ)となる可能性を秘めている。
国を守るためなら、何をやってもいいのか。
命の重さを、数で計りきれるのか。
――兄上、御自分の手で平和な国が築けて満足ですか。
周辺諸国がこの国を狙っていることぐらい、ご存じだったはずでしょう。
なのに貴方は何もしない。
戦争をすれば民を傷つけるからと言って、何もしようとはしない。
抵抗しなければどっち道滅ぶだけだと何故気付かない…!?
民に優しくしているのではない。
兄上は民を甘やかし、堕落させているだけだ。
私は敢えてこう言おう。
自分たちの国は、自分たちの手で守れ、と。
「すまない、優佳……」
兄上を善帝だと信じさせたままでクーデターを起こすには、私の目的が貴女だと示す他無かった。
私は貴女をも利用した。
でも、それでも信じて欲しい。
私の気持ちに、嘘偽りなどなかった。
貴女を愛しているという気持ちは嘘ではない。
「まさか……斎がこんなことをするとは」
恨むなら私を恨め、優佳。
斎のことをよく知りながら、彼を止められなかった私の責任だ。
そう思った女(ひと)には、既に恋人がいた。
恋人の名は庚親王。皇太子・灯央親王の弟君だった。
しかし彼女は灯央様と結婚した。
何故……?
だって貴女は今、庚様の御子を身籠ってらっしゃるのでしょう?
恥知らずな人だ。
違う。
悪いのは弟の恋人だと知りつつも奪った灯央様だ。
悪いのは庚様だろう?
だってあの人は、もう1人恋人がいた。
可哀そうな優佳様。
私が殺してあげましょうか。
死ねば自由になれる。
死は全てからの解放だ。
民に“死”を与えてあげる。
それこそが善き王だろう?
世間では“狂王”だと、噂されるだろうけど。
斎は目を覚ました。
「ここは……地下牢?」
そう呟くと、重々しい声が返ってくる。
「いかにも」
「庚様……!」
「斎。お前の望みは、狂王か」
斎はゆっくりと頷いた。
庚は苦笑する。
「私では駄目か」
「庚様は、灯央様以上の狂王にはなれません」
民は知らない。
夢のような幸せな国を作るために、灯央様が犠牲にした数多くのものを。
民は知らない。
平和に慣れ過ぎたこの黄凱は、近いうちに侵略されていただろうということを。
庚様が突然民を徴兵し鍛え始めたのは、何よりも民を守るため。
税を上げたのもそのためだ。
十分に作物が採れる今だからこそ、宮殿で食物を管理するために。
民に反乱を起こさせたのも、民が平和な夢から覚めるように。
「貴方は……優佳様を欲して灯央様を殺したわけではなかった」
「何を言う。私は優佳が目的だった」
「灯央様から民を守るために――」
「違う。兄上は善王だったと、皆そう信じているではないか」
「では何故、優佳様を殺した私をこうして生かしているのですか」
「―――…」
庚は何も答えず、黙って地下牢から出て行った。
「翏様をどこかへ連れて行ったのは、優佳様から翏様を守るため……?」
優佳様は翏様を煩わしく思っていた。
それを庚様は知っていた。
「貴方は狂王になど、なれやしない」
貴方は狂王を演じているだけだ。
優佳の体はまだ後宮のベッドの上に寝かせたままだった。
その周りを女官たちが涙を流しながら囲っている。
庚は優佳の体に近づき、そっとその頬に触れた。
「綺麗だ……」
傾国の美女だと、噂されるだけのことはある。
いくつ年を重ねても変わらない美しさ。
「本望だろう? 美しいまま逝けて……」
私は、貴女が欲しかった。
兄上に渡してしまったことを、心の底から後悔していた。
欲しくて欲しくて、ついに私はクーデターを起こした。
それも真実には変わらない。
人々は言うだろう。
善帝・灯央を弑し奉った私を、税を引き上げた私を、戦争のために賦役を課した私を、
とんでもない悪王だ、と。
それならそれでいいんだ。
灯央という善帝がいたことを、人々が支えとして生きていけるのなら。
兄上は善帝だったと、人々に信じさせ続けていく方がいい。
実際兄上は善き皇帝だった。
多くの民にとっては。
兄上はいちばんに民や国のことを考えていたのだから。
民や国のためにどうすべきかいつだって考えていたのだから。
ただ私は納得がいかなかった。
“1の犠牲で100を救う”
兄上が選んだこの方法に、どうしても納得がいかなかった。
ではその1の犠牲になった者たちは?
罪などないはずなのに、罪をでっちあげられ、処刑という名目で兄上に殺されていった者たちは?
人々は知らない。
彼らに罪がなかったことを、人々は知らない。
そればかりか兄上を褒め称える。
さすがは灯央様、どんな小さな悪も見逃さない。なんて立派な皇帝だろう、と。
領地を治める役人や貴族は兄上に悪事がばれることを恐れ、誠意をもって領地を治めようとする。
これが、恐怖政治以外のなんだと言えよう。
見せしめとしている者たちに罪がない分、恐怖政治よりも性質(たち)が悪い…!
多くの民にとっては確かに善帝だった。
しかし民は皆犠牲(いけにえ)となる可能性を秘めている。
国を守るためなら、何をやってもいいのか。
命の重さを、数で計りきれるのか。
――兄上、御自分の手で平和な国が築けて満足ですか。
周辺諸国がこの国を狙っていることぐらい、ご存じだったはずでしょう。
なのに貴方は何もしない。
戦争をすれば民を傷つけるからと言って、何もしようとはしない。
抵抗しなければどっち道滅ぶだけだと何故気付かない…!?
民に優しくしているのではない。
兄上は民を甘やかし、堕落させているだけだ。
私は敢えてこう言おう。
自分たちの国は、自分たちの手で守れ、と。
「すまない、優佳……」
兄上を善帝だと信じさせたままでクーデターを起こすには、私の目的が貴女だと示す他無かった。
私は貴女をも利用した。
でも、それでも信じて欲しい。
私の気持ちに、嘘偽りなどなかった。
貴女を愛しているという気持ちは嘘ではない。
「まさか……斎がこんなことをするとは」
恨むなら私を恨め、優佳。
斎のことをよく知りながら、彼を止められなかった私の責任だ。
PR
カレンダー
カテゴリー
最新記事
最新コメント
ブログ内検索