還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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綸が紅雪軍に?
――何故、紅雪軍に…!
驚きを隠せない庚の陰で、そう報告した兵士に別の兵士が問う。
「本当の話か? 倫様は生きてらっしゃったということか?」
「分からない。けれど俺もはっきりと見たんだ。“庚様の若い頃にそっくりな”男を…!」
「庚様に…?」
庚は気を取り直して、近くにいる兵士たちに怒鳴る声をあげる。
「一番隊、二番隊を残して全軍出動準備に取りかかれ!! 軍の指揮は私が執るっ!」
紅雪軍は、何としてでも国境で食い止める…!!
「なぁ節里。いいだろ? 烟梓の奴らは1人で3、4人分の働きはするぜ」
沈黙する節里に、朔は笑いかける。
「それとも俺たちみたいな罪人とは手を組めないってか?」
「それは…っ」
翏はハラハラとしながら2人のやりとりを見ていた。
「別にそれならそれでもいいんだけど」
朔はそう言いながら、今度は翏に微笑んで言う。
「俺たちと手を組まないっていうのならお前たちが損なんだぜ。自分たちだけで革命が成功するとでも思ってんのか? はっそんなの有り得ないね。無謀にも程があるっ! みすみす死にに行くようなもんだろ」
「貴様! 我々を侮辱するのもいい加減に――」
「プライドで命が買えるのか? 下手なプライドばかりあっちゃ、命がいくつあっても足りないな。あーやめだやめだ! お前らと組んだら足を引っ張られそうだっ! さっきの話は忘れてくれ。……んでもって、翏は俺たちが連れて行くぜ」
朔は右手で翏の手を取った。
「翏様から手を離せっ!」
ものすごい剣幕で自分に近づく節里に、朔は左手で素早く剣を抜く。そして切っ先をその顔に向けた。
節里はそれ以上動けず静止する。
「悪いな節里」
意地の悪そうな朔の声。
でも翏は信じていた。
この人は口は悪いけれど、根はきっと優しい人なのだろう、と。
この人と一緒にいるのであれば、私はどちらに与してもかまわない――。
「翏様は我々のシンボルだ…!」
節里の声が響いた。朔は負けずに言い返す。
「違う。お前はそう言ってただ翏を利用しているだけだ。そっちにいれば翏は傷つく。でもこっちにいれば俺が守ってあげられる。
友人の大切な妹君だ。死なせるわけにはいかないんでね」
ドクンと、翏の心臓が揺れた。
「お兄様…?」
翏の瞳が、朔の微笑をとらえる。
「貴方は、お兄様を御存知なのですか…?」
「お前もすでに会っているだろ」
そう言われ、1人の男の姿が翏の脳裏に浮かんだ。自分を引き取ると言ってくれた、どことなく優しい目をしたあの男の姿が。
自分自身であの人に言わなかったか。
“貴方を見ると、亡くなった兄を思い出す”
「生きていらした…!」
本当に、生きていた。
お兄様は、死んだと思っていたお兄様は。
烟梓の町で、生きていた…!
「綸様は、やはり亡くなってはいなかった…?」
節里の声は震えていた。
焦りか、喜びか。
そんなことは分からないが、今聞いた事実に興奮しているのは確かだ。
綸様が。
愚帝・庚の御子が。
――生きていた!!
――何故、紅雪軍に…!
驚きを隠せない庚の陰で、そう報告した兵士に別の兵士が問う。
「本当の話か? 倫様は生きてらっしゃったということか?」
「分からない。けれど俺もはっきりと見たんだ。“庚様の若い頃にそっくりな”男を…!」
「庚様に…?」
庚は気を取り直して、近くにいる兵士たちに怒鳴る声をあげる。
「一番隊、二番隊を残して全軍出動準備に取りかかれ!! 軍の指揮は私が執るっ!」
紅雪軍は、何としてでも国境で食い止める…!!
「なぁ節里。いいだろ? 烟梓の奴らは1人で3、4人分の働きはするぜ」
沈黙する節里に、朔は笑いかける。
「それとも俺たちみたいな罪人とは手を組めないってか?」
「それは…っ」
翏はハラハラとしながら2人のやりとりを見ていた。
「別にそれならそれでもいいんだけど」
朔はそう言いながら、今度は翏に微笑んで言う。
「俺たちと手を組まないっていうのならお前たちが損なんだぜ。自分たちだけで革命が成功するとでも思ってんのか? はっそんなの有り得ないね。無謀にも程があるっ! みすみす死にに行くようなもんだろ」
「貴様! 我々を侮辱するのもいい加減に――」
「プライドで命が買えるのか? 下手なプライドばかりあっちゃ、命がいくつあっても足りないな。あーやめだやめだ! お前らと組んだら足を引っ張られそうだっ! さっきの話は忘れてくれ。……んでもって、翏は俺たちが連れて行くぜ」
朔は右手で翏の手を取った。
「翏様から手を離せっ!」
ものすごい剣幕で自分に近づく節里に、朔は左手で素早く剣を抜く。そして切っ先をその顔に向けた。
節里はそれ以上動けず静止する。
「悪いな節里」
意地の悪そうな朔の声。
でも翏は信じていた。
この人は口は悪いけれど、根はきっと優しい人なのだろう、と。
この人と一緒にいるのであれば、私はどちらに与してもかまわない――。
「翏様は我々のシンボルだ…!」
節里の声が響いた。朔は負けずに言い返す。
「違う。お前はそう言ってただ翏を利用しているだけだ。そっちにいれば翏は傷つく。でもこっちにいれば俺が守ってあげられる。
友人の大切な妹君だ。死なせるわけにはいかないんでね」
ドクンと、翏の心臓が揺れた。
「お兄様…?」
翏の瞳が、朔の微笑をとらえる。
「貴方は、お兄様を御存知なのですか…?」
「お前もすでに会っているだろ」
そう言われ、1人の男の姿が翏の脳裏に浮かんだ。自分を引き取ると言ってくれた、どことなく優しい目をしたあの男の姿が。
自分自身であの人に言わなかったか。
“貴方を見ると、亡くなった兄を思い出す”
「生きていらした…!」
本当に、生きていた。
お兄様は、死んだと思っていたお兄様は。
烟梓の町で、生きていた…!
「綸様は、やはり亡くなってはいなかった…?」
節里の声は震えていた。
焦りか、喜びか。
そんなことは分からないが、今聞いた事実に興奮しているのは確かだ。
綸様が。
愚帝・庚の御子が。
――生きていた!!
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お金さえあれば、見逃してもらえたの……?
お金さえあれば、他人に罪をなすりつけるのも自由なの?
お金さえあれば。
――そうすれば、“死なない”ことも選べたの?
「あーむしゃくしゃする!」
愬は叫んだ。
「どうしたんですか……?」
少し怯えながら翏が問うと、愬は首を振った。
「何でもねーよ。ただ――」
「ただ?」
それきり愬は黙り込んだ。
翏もそれ以上追及することなくじっとしている。
今翏と愬を含める革命軍およそ1000人は黄凱とその隣国、蒼游との国境付近にいた。2人がここに来てからもう数日が経過している。
いた、と言っても集合はしておらず、武具もつけずに武器だけを持ってあちこちに点在している状態だ。
集合して未然に蜂起が知られることを防ぐためらしい。
皇帝・庚は鎮圧に優れた指揮を執ることは誰もが知っていた。そしてまた、認めていた。
「これからどうするんですか?」
翏は傍に控えていた節里に訊いた。
節里は答える。
「我々は1000人程度しかいません。せめてあとその5倍は欲しいところ。その人数を集めるために、我々は貴女様をお探し申し上げたのです」
「では今人数を集めているんですね?」
「そうです。実際に庚を攻めるのは人数とそれに見合う武器等を揃えてからとなります」
根性ないな、やっぱり。
平和な国・黄凱らしい。
人数がいなければ怖いってか。
そもそも人数さえいればどうにかなると思っているんだろ。
そんな甘いことじゃないだろう。
ざっと革命軍の訓練を見て回ったけど、使えそうな奴がいない。
人数を揃えただけじゃ、あっという間に鎮圧される。
そして鎮圧されて困るのは、象徴と崇められた翏だ。
節里は負けたことのことを考えていない。
だから無責任に翏に先導役を押しつける。
そんなことも思いつけない。
――生温い国だ。
愬はそんなことを思いつつ、2人を離れて森に入った。
「斎……待ってろよ」
革命は失敗する確率が高いだろうが、革命という事実さえあればそれでいい。
その混乱を利用して自分だけでも斎に会う。
会ってお前に言いたいことがあるんだ。
「いけないね、愬。俺に何も言わずにこんなところまで来るなんて」
「は……?」
急にかけられた声に、愬は困惑しつつもその方向を見た。
「詩紀!」
「数日ぶり? 翏も一緒だろ?」
「一緒だぜ。しっかしお前は……いや、お前らはどうして……」
愬は詩紀の後ろにいる男たちを見た。
詩紀は微笑む。
「まだいるよ。皆来てる」
「皆…?」
「そう、皆。蒼游には何やら物騒な輩がたくさんいるね」
「ああ。でも弱そうだったろ?」
「そうだね。脅せば全て計画を吐いていたよ。そんなんで成功するのかな」
「脅したんだ? じゃあ今何が起ころうとしているのかも分かってんだな」
「まぁね。まさか同じ目的の人間がこんなに蒼游に集まってるとは思わなかったけど」
愬は目を見開く。
「同じ目的? ――はっさすがだな、詩紀! まさか“皆”で黄凱乗っ取るつもりか!」
「燐が来て10年。こつこつと武力は集めたつもりだよ。ようやく十分に揃って、機は熟した」
「気の長い話だよなー。で、肝心の燐は? あいつがいなきゃお前の夢は叶わねーだろ」
黄凱という国で家を再興する。
それが詩紀の目的。
黄凱そのものを潰してしまっては意味がない。だから黄凱の皇族の血を引く革命側の人間が必要なのだ。
そして黄凱という豊かな土地に、烟梓の人間を受け入れてもらう。
烟梓で生まれた、何も知らない子どもたちにまっとうな世界で生きてもらうために。
――黄凱への見返りは武力。そして、危険なことを生業とする人間の多い烟梓の人間は、裏社会でのコネも多い。
「燐に仄めかしはしたよ。あとは本人がどうするのか」
「来ないわけがない、って思ってるんだろ?」
「まあね。ちなみに、新皇帝はお前がついていった翏様でもいいけど?」
「翏ならきっと、話分かってくれるよ」
愬は先程まで感じていた苛々が吹き飛んでいるのが分かった。
思わず笑顔になる。
「来いよ、詩紀。翏と、リーダー・節里に会わせてやるよ」
「紅雪の軍隊がこの国に向かっているだと……!?」
――馬鹿な。
周辺諸国より何より、まさか紅雪がやってくるとは!
「斎! すぐに――」
庚はそう言いかけて気づく。
「あいつは牢か……!」
大国・紅雪。
まず知らなければならないのはどれくらいの兵力でやってきたのか。
――どれくらい、なんて知っても無意味か。
今この国が紅雪に勝てるわけがない。
徴兵令を出して人を集め、未だ訓練を十分に行ってはいない。
今むざむざ国民を戦争に出すわけにはいかない。
「私は、民に死んで欲しくて徴兵したわけではない!」
自分たちの手で、“自分たちの国”を守ってもらうためだ!
兄上は、黄凱を“自分の国”だと思っていた。
だからこそ大切に慈しみ、簡単に切り離す。
国を自分だけの箱庭のように育てるから、周辺諸国のことにもあまり目を向けなかった。
だからいつの間にか黄凱は、侵略に常に怯えなければならなくなった…!!
善帝・灯央。
黄凱の民の心の支え。
私は人々から兄上(ささえ)を奪った者として。
“黄凱という国”だけは、奪われるわけにはいかないんだ!!
「庚様! 紅雪軍偵察隊からの知らせです!」
慌ただしくやって来た男は、息を切らせながらも大声で言う。
「そっくりな人がいたんです!」
「――――は?」
「そっくりな男が! もしかしたらその男、
綸様かもしれません……!!」
お金さえあれば、他人に罪をなすりつけるのも自由なの?
お金さえあれば。
――そうすれば、“死なない”ことも選べたの?
「あーむしゃくしゃする!」
愬は叫んだ。
「どうしたんですか……?」
少し怯えながら翏が問うと、愬は首を振った。
「何でもねーよ。ただ――」
「ただ?」
それきり愬は黙り込んだ。
翏もそれ以上追及することなくじっとしている。
今翏と愬を含める革命軍およそ1000人は黄凱とその隣国、蒼游との国境付近にいた。2人がここに来てからもう数日が経過している。
いた、と言っても集合はしておらず、武具もつけずに武器だけを持ってあちこちに点在している状態だ。
集合して未然に蜂起が知られることを防ぐためらしい。
皇帝・庚は鎮圧に優れた指揮を執ることは誰もが知っていた。そしてまた、認めていた。
「これからどうするんですか?」
翏は傍に控えていた節里に訊いた。
節里は答える。
「我々は1000人程度しかいません。せめてあとその5倍は欲しいところ。その人数を集めるために、我々は貴女様をお探し申し上げたのです」
「では今人数を集めているんですね?」
「そうです。実際に庚を攻めるのは人数とそれに見合う武器等を揃えてからとなります」
根性ないな、やっぱり。
平和な国・黄凱らしい。
人数がいなければ怖いってか。
そもそも人数さえいればどうにかなると思っているんだろ。
そんな甘いことじゃないだろう。
ざっと革命軍の訓練を見て回ったけど、使えそうな奴がいない。
人数を揃えただけじゃ、あっという間に鎮圧される。
そして鎮圧されて困るのは、象徴と崇められた翏だ。
節里は負けたことのことを考えていない。
だから無責任に翏に先導役を押しつける。
そんなことも思いつけない。
――生温い国だ。
愬はそんなことを思いつつ、2人を離れて森に入った。
「斎……待ってろよ」
革命は失敗する確率が高いだろうが、革命という事実さえあればそれでいい。
その混乱を利用して自分だけでも斎に会う。
会ってお前に言いたいことがあるんだ。
「いけないね、愬。俺に何も言わずにこんなところまで来るなんて」
「は……?」
急にかけられた声に、愬は困惑しつつもその方向を見た。
「詩紀!」
「数日ぶり? 翏も一緒だろ?」
「一緒だぜ。しっかしお前は……いや、お前らはどうして……」
愬は詩紀の後ろにいる男たちを見た。
詩紀は微笑む。
「まだいるよ。皆来てる」
「皆…?」
「そう、皆。蒼游には何やら物騒な輩がたくさんいるね」
「ああ。でも弱そうだったろ?」
「そうだね。脅せば全て計画を吐いていたよ。そんなんで成功するのかな」
「脅したんだ? じゃあ今何が起ころうとしているのかも分かってんだな」
「まぁね。まさか同じ目的の人間がこんなに蒼游に集まってるとは思わなかったけど」
愬は目を見開く。
「同じ目的? ――はっさすがだな、詩紀! まさか“皆”で黄凱乗っ取るつもりか!」
「燐が来て10年。こつこつと武力は集めたつもりだよ。ようやく十分に揃って、機は熟した」
「気の長い話だよなー。で、肝心の燐は? あいつがいなきゃお前の夢は叶わねーだろ」
黄凱という国で家を再興する。
それが詩紀の目的。
黄凱そのものを潰してしまっては意味がない。だから黄凱の皇族の血を引く革命側の人間が必要なのだ。
そして黄凱という豊かな土地に、烟梓の人間を受け入れてもらう。
烟梓で生まれた、何も知らない子どもたちにまっとうな世界で生きてもらうために。
――黄凱への見返りは武力。そして、危険なことを生業とする人間の多い烟梓の人間は、裏社会でのコネも多い。
「燐に仄めかしはしたよ。あとは本人がどうするのか」
「来ないわけがない、って思ってるんだろ?」
「まあね。ちなみに、新皇帝はお前がついていった翏様でもいいけど?」
「翏ならきっと、話分かってくれるよ」
愬は先程まで感じていた苛々が吹き飛んでいるのが分かった。
思わず笑顔になる。
「来いよ、詩紀。翏と、リーダー・節里に会わせてやるよ」
「紅雪の軍隊がこの国に向かっているだと……!?」
――馬鹿な。
周辺諸国より何より、まさか紅雪がやってくるとは!
「斎! すぐに――」
庚はそう言いかけて気づく。
「あいつは牢か……!」
大国・紅雪。
まず知らなければならないのはどれくらいの兵力でやってきたのか。
――どれくらい、なんて知っても無意味か。
今この国が紅雪に勝てるわけがない。
徴兵令を出して人を集め、未だ訓練を十分に行ってはいない。
今むざむざ国民を戦争に出すわけにはいかない。
「私は、民に死んで欲しくて徴兵したわけではない!」
自分たちの手で、“自分たちの国”を守ってもらうためだ!
兄上は、黄凱を“自分の国”だと思っていた。
だからこそ大切に慈しみ、簡単に切り離す。
国を自分だけの箱庭のように育てるから、周辺諸国のことにもあまり目を向けなかった。
だからいつの間にか黄凱は、侵略に常に怯えなければならなくなった…!!
善帝・灯央。
黄凱の民の心の支え。
私は人々から兄上(ささえ)を奪った者として。
“黄凱という国”だけは、奪われるわけにはいかないんだ!!
「庚様! 紅雪軍偵察隊からの知らせです!」
慌ただしくやって来た男は、息を切らせながらも大声で言う。
「そっくりな人がいたんです!」
「――――は?」
「そっくりな男が! もしかしたらその男、
綸様かもしれません……!!」
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