還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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黄凱軍と紅雪軍がぶつかり合う隙をついて革命軍がひっそりと城を取り囲んだ。
数人が潜入し、文官たちを取り押さえて人質にし、城門を開ける。
城内の異変に気付いた家臣はすぐに伝令を戦場にいる庚へと送ろうとしたが、既に取り囲まれていたために伝令は城から離れる前に取り押さえられた。
警備の薄くなっていた城は今、あっさりと落とされようとしているのだ。
俺はじっと戦場を眺めた。人々のうめき声、何を言っているのかよく聞き取れない叫び、馬や人間の足音、剣のこすれる音。辺りに舞う砂埃が、既に息のない者たちの体を覆い隠す。
ああ――懐かしい。
どれもこれも、かつて見たことのある景色。目に焼き付いて離れない映像。耳に残って消え去らない音。捕らえられて連れ去られた皇宮の謁見の間。玉座の傍で落とされる父の首。覚悟した死。思いがけず生かされて、芽生えたのは怒り。
「何を見ているのです?」
声が聞こえた。覚えのある声。
その声が、父の死を命じた。
「何も。ただ思い出していました。貴方が10年前につくった、これと同じような景色を」
俺は庚を捉えた。
彼は戦のための鎧を付け、剣を携えている。それらは既に誰かの血で汚れていた。
「お久しぶりですね、叔父上」
庚は目を細め、薄く笑う。
「やはり生きていらっしゃったんですね、綸」
「烟梓の町で、生きてきました」
「復讐しに来たのですか」
庚は剣を鞘におさめた。頭の防具を外し、それを部下に持たせるとゆっくりと俺に近づく。10年も経てば当り前のことだが、彼の顔は記憶よりも皺が多かった。
その時、微かに破裂音が聞こえた。
俺と庚は同時にその方角を見る。皇宮があるはずの場所からのろしが上がっているのが見えた。
庚はため息を吐く。
「あれは、貴方が?」
俺は首を振った。
「俺は関与していません。しかしおそらくは、俺の親友がやっていることです。彼は俺をこの国の皇帝にしたがっていました」
庚は眉をひそめ、頭をかく。
すぐ傍では変わらず殺し合いが行われているというのに、俺たち2人の周りだけは時間がゆっくりと進んでいる様に思えた。
「綸、貴方が紅雪軍を連れて来たのですか」
いや、たまたま会って俺がついて来ただけだ。
「だったらどうします? 叔父上――」
「“何故誰も、気付かない”」
薄暗い牢屋の中で、斎は壁に背を預け、じっと虚空を見つめながら呟いた。
「“何故誰もが、目を背ける”」
何故、何故だ斎。
お前までもが何故!
許されるのかこんなことが!
約束したじゃないか、斎。
私と、兄上と。
「皆が幸せに――など、有り得ない。誰かが幸福を手に入れれば、誰かが不幸になる。……それを終わらせるためには、方法は1つしかない」
全ての人間に、死を。
「“死”という名の幸福を」
あの安らぎの顔が忘れられない。
あの、母の最期の表情が。
母に生きて欲しくて必死になっていた自分が、馬鹿馬鹿しくなった。
大きな、矛盾。
頑張って頑張って必死になってお金をかき集めて薬を買って。
それが母のためになるのだと思っていたのに、違った。
頭で処理できなくなった感情。
母の遺体を目の前に、静かに手が震えていた。
――頭が、痛い。
一体、自分のしてきたことは何だったのか。
誰か教えて。
誰か教えて。
そして誰か僕の心を、
「救って」
数人が潜入し、文官たちを取り押さえて人質にし、城門を開ける。
城内の異変に気付いた家臣はすぐに伝令を戦場にいる庚へと送ろうとしたが、既に取り囲まれていたために伝令は城から離れる前に取り押さえられた。
警備の薄くなっていた城は今、あっさりと落とされようとしているのだ。
俺はじっと戦場を眺めた。人々のうめき声、何を言っているのかよく聞き取れない叫び、馬や人間の足音、剣のこすれる音。辺りに舞う砂埃が、既に息のない者たちの体を覆い隠す。
ああ――懐かしい。
どれもこれも、かつて見たことのある景色。目に焼き付いて離れない映像。耳に残って消え去らない音。捕らえられて連れ去られた皇宮の謁見の間。玉座の傍で落とされる父の首。覚悟した死。思いがけず生かされて、芽生えたのは怒り。
「何を見ているのです?」
声が聞こえた。覚えのある声。
その声が、父の死を命じた。
「何も。ただ思い出していました。貴方が10年前につくった、これと同じような景色を」
俺は庚を捉えた。
彼は戦のための鎧を付け、剣を携えている。それらは既に誰かの血で汚れていた。
「お久しぶりですね、叔父上」
庚は目を細め、薄く笑う。
「やはり生きていらっしゃったんですね、綸」
「烟梓の町で、生きてきました」
「復讐しに来たのですか」
庚は剣を鞘におさめた。頭の防具を外し、それを部下に持たせるとゆっくりと俺に近づく。10年も経てば当り前のことだが、彼の顔は記憶よりも皺が多かった。
その時、微かに破裂音が聞こえた。
俺と庚は同時にその方角を見る。皇宮があるはずの場所からのろしが上がっているのが見えた。
庚はため息を吐く。
「あれは、貴方が?」
俺は首を振った。
「俺は関与していません。しかしおそらくは、俺の親友がやっていることです。彼は俺をこの国の皇帝にしたがっていました」
庚は眉をひそめ、頭をかく。
すぐ傍では変わらず殺し合いが行われているというのに、俺たち2人の周りだけは時間がゆっくりと進んでいる様に思えた。
「綸、貴方が紅雪軍を連れて来たのですか」
いや、たまたま会って俺がついて来ただけだ。
「だったらどうします? 叔父上――」
「“何故誰も、気付かない”」
薄暗い牢屋の中で、斎は壁に背を預け、じっと虚空を見つめながら呟いた。
「“何故誰もが、目を背ける”」
何故、何故だ斎。
お前までもが何故!
許されるのかこんなことが!
約束したじゃないか、斎。
私と、兄上と。
「皆が幸せに――など、有り得ない。誰かが幸福を手に入れれば、誰かが不幸になる。……それを終わらせるためには、方法は1つしかない」
全ての人間に、死を。
「“死”という名の幸福を」
あの安らぎの顔が忘れられない。
あの、母の最期の表情が。
母に生きて欲しくて必死になっていた自分が、馬鹿馬鹿しくなった。
大きな、矛盾。
頑張って頑張って必死になってお金をかき集めて薬を買って。
それが母のためになるのだと思っていたのに、違った。
頭で処理できなくなった感情。
母の遺体を目の前に、静かに手が震えていた。
――頭が、痛い。
一体、自分のしてきたことは何だったのか。
誰か教えて。
誰か教えて。
そして誰か僕の心を、
「救って」
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