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絶望的な顔をして母親が運んできた一枚の紙切れ。
俺には、それが希望に見えた。
その紙切れは招集令状。第七次世界大戦下、日本では『一般兵』が徴収されて戦地に赴く。
成人して、いよいよ俺も行かなければならない。
戦争に行かなければならなくても、俺にはそれが希望だった。
紙にはこうはっきりと書かれてあったからだ。
三好晶:20
任地:ハワイ島ハワイ基地
<ハワイ基地司令部>
司令官:保坂行峰少佐
参謀長:門真蛍大尉
高級参謀:藤森高雄中尉
作戦参謀:寺山修一中尉
情報参謀:中川結城少尉
先行調査部隊隊長:妹尾一喜少尉
先行調査部隊副隊長:佐木浩介少尉
『門真蛍』
その文字を見たとたん、嬉しくてたまらなかった。
戦争に行けば会える。
体が震えた。
『またいつか』なんていう不確かな約束が、急に現実味を帯びてきて。
「蛍……」
お前は今どうしてる?
今すぐ会いに、行きたいよ。
招集令状が届いた3ヶ月後、俺はようやくハワイまでやって来た。
新たにハワイに投入された援軍およそ500名は、船から下りた後基地内の1ヵ所に集められる。
俺は船の中で仲良くなった奴らと一緒に指示された部屋の中に入った。
「うわぁまじ緊張するー」
そう言った男は春間と言って俺より2つ年上らしい。あとは1つ上の今藤に、5つ上の相坂。いずれも大学や専門学校に行っていたので、その年まで徴兵を免れていた人たちだ。
「でもようやくこの基地の幹部に会えるんだよな」
今藤の台詞に、心臓が揺れた。その幹部の中には蛍も含まれるのだ。
相坂が相づちを打つ。
「そうそう。聞いた話だと、門真大尉っていう人がものすごく優秀な人らしくて」
更に心臓が揺れる。
やばい。周りにも音が聞こえてしまいそうだ。
そんな俺の焦りを余所に、相坂は話を続ける。
「この基地の司令部って最高が保坂『少佐』だろ。でもここは戦勝続き。それって参謀長の門真大尉のおかげらしい」
「若い人って聞いたぞ。確か20……三好と同じ歳だよな?」
春間がにこっと笑いかけてきた。
「へ? あ……うん…」
「どうしたんだよ三好、お前もやっぱ緊張してる?」
「そりゃ俺だって緊張するさ! 特に……その、門真大尉? 中学校の同級で……久々に会うから…」
「まじで!? 門真大尉ってお前の友だち?」
俺は頷いた。
と、その時。
「ああ、俺たちって『友だち』だったんだな」
聞き覚えのある、声。
俺はその声がした方を見た。
そこに立っていたのは、俺たち一般兵とは違う、将校の軍服を着た男で。
中学の頃とは違って髪を伸ばし、背も伸びて、声も多少は低くなってて。
でも、懐かしい、会いたくてたまらなかった人。
「蛍……!」
俺は駆け寄った。
「久しぶり、三好」
「本物…? 本物だよな」
「ああ。本物だ」
俺は涙をこらえる。
こんな所で、皆の前で、泣くわけにはいかない。
「また…よろしくな」
「そうだな。お前には働いてもらうぞ」
「うん、分かってる」
お前のためなら、いくらでも。
蛍は微かに笑顔を見せると、あっという間にどこかへと行ってしまった。
こんな風にあっさりしてるのも、お前らしい。
「本当に門真大尉と知り合いだったんだ!」
今藤が感心したように言う。
「でも『友だち』だったんだなって大尉言ってたぞ。友だちじゃなかったの?」
俺はにっと笑った。
「『親友』だったんだよ」
「あ、成る程ね~」
少なくとも中学のときは、親友だった。
会えなかった4年間で俺たちの関係がどうなったのかは今は分からない。
でもこうして再会することができた。
信じてる、今だって俺たちが親友だってこと。
4年前は、もう1度同じ場所で生きられるなんて、希望はあっても、しっかりと信じることはできなかった。
でも違った。こうして会えた。
これから戦場で生きるのは想像以上に苦しいものだろう。
だけどお前がここにいるなら、俺は頑張れる。
今はただ、喜びを胸に。
この戦場で、お前と共に生きたい。