還空論
HP「SECRET GAME」の付属ブログです。日記や小説。
ただしここでの小説には、あまり計画性がありません; HPの小説の番外編もあります。
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貞興が平伏したことで、周囲の軍人たちに動揺が走る。皆遠巻きに俺たち2人を眺めていた。
「頭を上げろ、貞興」
俺は言った。貞興はゆっくりと顔を俺に向け、訴えるような瞳で言う。
「何故、このようなところに」
「初めに聞きたいのはそれか? 死んだはずの俺が生きていたんだ」
「私は御遺体を拝見していなかったもので、綸様が亡くなったとはどうしても信じられませんでした」
「……なるほど。ところでお前は、参謀長などという高い官職をもらっているところを見ると、父上を裏切って庚側についたんだな」
貞興は目を見開く。そして絶句した。
「なーんて。そんなことどうでもいいけど」
「り、綸様……!?」
「ごめんごめん。少し意地の悪いことを言った」
その場にいる軍人たちは戸惑いはあるものの、貞興の態度を見て俺を敵だと認識している様子はない。
武器を向けられないのは好都合だ。
「さて、お前に頼みがあるんだけど」
俺は戦場を眺めながら言う。
「叔父上と話がしたいんだ。戦争中で悪いが、戦場から呼び戻してくれないか」
父上、母上、兄上たち。
皆皆、死んでしまった。
俺だけ生き延びてごめんなさい。
父上は罪人なんかじゃない。それは俺がよく知っている。
しかし領土は取り上げられ、貴族としての称号も剥奪され、俺は烟梓に送られて、故郷に皆の墓をつくってあげることもできなかった。
今はただ烟梓の墓地に、空の墓があるばかり。
俺は誓う。
いつか必ず家を復興させ、元の領土を手にする。
そしてかつて暮らしていた館が燃やされ、皆の体も共に灰になった場所――皆が本当に眠っている場所に、綺麗な墓を作るよ。
「詩紀、どうした?」
詩紀ははっとして隣に立つ愬を見る。
「いや、ただ少し思い出すことがあってね」
「殺された家族のことか?」
「ああ」
「罪人として汚名を着せられ殺される、ね。本当……よくある話だよな」
烟梓の町に送られてから数年後、見覚えのある少年が町にやって来た。
赤い髪の少年――俺は彼のおかげで命を繋いだも同然なのだ。陛下が、自分の息子と同じ年頃で、同じ髪の色を持ち、似たような雰囲気である俺を殺すのをためらったから。
半信半疑だったが、着ている服、そして“リン”という名を聞いて確証に変わった。
同時に見通しのなかった夢のような誓いが、現実味を帯びてきたことも感じた。
それから10年。度々町を抜け出しては人脈を作り、金を稼ぎ、武器と人を集めた。
しかしいざ行動を起こすとなるとその機会にはなかなか恵まれなかった。今回は滅多にない好機。大国・紅雪がやって来るなど、これ以上の好機はない。逃す手はないだろう。
黄凱は小国だ。人口が少ない分軍人や兵士の数が少ない。紅雪では大して大きくもない遠征隊にも、全力で臨まなければならない。
確実に城は空く。――空けなければならない。
「感慨深い物を感じるよ。実際に城を目の前にすると、さ」
詩紀は呟いた。その小さな声を愬は聞き取り、頷く。
「お前がずっと言い続けて来た夢だもんなっ」
「ああ。さて、愬。分かってるな? 兵の数を減らすような無茶はするな。城を制圧するのが問題じゃない。それは最低限のこと。あくまで城を拠点にして、おそらく黄凱軍に勝利するであろう紅雪軍を退けるまでは終わらない。紅雪に乗っ取られてしまえば終わりなんだから」
「分かってるさ。でも紅雪になんて勝てんのかよ」
「勝つ必要はない。撤退させるだけで十分だ。それくらいなら烟梓の人間だけでもなんとかなるだろう? 一度本国に戻って攻め方を練り直す必要がある、くらいに思わせられれば十分だよ」
「無理じゃないか?」
「無理かもね」
「お前ってたまーに胡散臭い奴。なんでもいいけど、なんか手伝ってほしいことがあればちゃんと言えよ」
詩紀は笑う。
「それは大丈夫、愬にできることは何もないよ」
「――あ、そう」
「頭を上げろ、貞興」
俺は言った。貞興はゆっくりと顔を俺に向け、訴えるような瞳で言う。
「何故、このようなところに」
「初めに聞きたいのはそれか? 死んだはずの俺が生きていたんだ」
「私は御遺体を拝見していなかったもので、綸様が亡くなったとはどうしても信じられませんでした」
「……なるほど。ところでお前は、参謀長などという高い官職をもらっているところを見ると、父上を裏切って庚側についたんだな」
貞興は目を見開く。そして絶句した。
「なーんて。そんなことどうでもいいけど」
「り、綸様……!?」
「ごめんごめん。少し意地の悪いことを言った」
その場にいる軍人たちは戸惑いはあるものの、貞興の態度を見て俺を敵だと認識している様子はない。
武器を向けられないのは好都合だ。
「さて、お前に頼みがあるんだけど」
俺は戦場を眺めながら言う。
「叔父上と話がしたいんだ。戦争中で悪いが、戦場から呼び戻してくれないか」
父上、母上、兄上たち。
皆皆、死んでしまった。
俺だけ生き延びてごめんなさい。
父上は罪人なんかじゃない。それは俺がよく知っている。
しかし領土は取り上げられ、貴族としての称号も剥奪され、俺は烟梓に送られて、故郷に皆の墓をつくってあげることもできなかった。
今はただ烟梓の墓地に、空の墓があるばかり。
俺は誓う。
いつか必ず家を復興させ、元の領土を手にする。
そしてかつて暮らしていた館が燃やされ、皆の体も共に灰になった場所――皆が本当に眠っている場所に、綺麗な墓を作るよ。
「詩紀、どうした?」
詩紀ははっとして隣に立つ愬を見る。
「いや、ただ少し思い出すことがあってね」
「殺された家族のことか?」
「ああ」
「罪人として汚名を着せられ殺される、ね。本当……よくある話だよな」
烟梓の町に送られてから数年後、見覚えのある少年が町にやって来た。
赤い髪の少年――俺は彼のおかげで命を繋いだも同然なのだ。陛下が、自分の息子と同じ年頃で、同じ髪の色を持ち、似たような雰囲気である俺を殺すのをためらったから。
半信半疑だったが、着ている服、そして“リン”という名を聞いて確証に変わった。
同時に見通しのなかった夢のような誓いが、現実味を帯びてきたことも感じた。
それから10年。度々町を抜け出しては人脈を作り、金を稼ぎ、武器と人を集めた。
しかしいざ行動を起こすとなるとその機会にはなかなか恵まれなかった。今回は滅多にない好機。大国・紅雪がやって来るなど、これ以上の好機はない。逃す手はないだろう。
黄凱は小国だ。人口が少ない分軍人や兵士の数が少ない。紅雪では大して大きくもない遠征隊にも、全力で臨まなければならない。
確実に城は空く。――空けなければならない。
「感慨深い物を感じるよ。実際に城を目の前にすると、さ」
詩紀は呟いた。その小さな声を愬は聞き取り、頷く。
「お前がずっと言い続けて来た夢だもんなっ」
「ああ。さて、愬。分かってるな? 兵の数を減らすような無茶はするな。城を制圧するのが問題じゃない。それは最低限のこと。あくまで城を拠点にして、おそらく黄凱軍に勝利するであろう紅雪軍を退けるまでは終わらない。紅雪に乗っ取られてしまえば終わりなんだから」
「分かってるさ。でも紅雪になんて勝てんのかよ」
「勝つ必要はない。撤退させるだけで十分だ。それくらいなら烟梓の人間だけでもなんとかなるだろう? 一度本国に戻って攻め方を練り直す必要がある、くらいに思わせられれば十分だよ」
「無理じゃないか?」
「無理かもね」
「お前ってたまーに胡散臭い奴。なんでもいいけど、なんか手伝ってほしいことがあればちゃんと言えよ」
詩紀は笑う。
「それは大丈夫、愬にできることは何もないよ」
「――あ、そう」
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